【トリビア】環境調査の人が1晩本気で探して見つかるオオサンショウウオの数は【108匹】

「この川にはオオサンショウウオが何匹いるんだろう......」

事の発端は、シンプルで素朴な疑問だった。

全国的には珍しいけれど、いる場所にはたくさん生息している。それがオオサンショウウオ。

自分が知っている川も例にもれず、夜中に観察すれば巨体がゴロゴロと居座っている。

今回は、1晩オオサンショウウオを探して、個体数と生息密度を観察してみた。

ダイジェストは、動画でどうぞ。

オオサンショウウオは「特別天然記念物」でおさわり厳禁

前提として、オオサンショウウオは国の特別天然記念物に指定されている

  • 文化財保護法
  • 種の保存法

といった法律で守られているため、許可なく触ることはできない

今回もおさわり厳禁で、撮影のみ。撮影時間も1個体につき10秒程度にする。

あくまで、総数と環境ごとの生息密度を知りたいので、じっくり眺めるのは二の次である。

というよりも、環境調査(オオサンショウウオの保護調査など)の仕事で触れ合っていると「触りたい」という欲求は皆無だヌルヌルだし、噛まれたら痛いなんてもんじゃないし。リスク増しまし。

ちなみに、GPSで座標も落とすつもりなので、どの場所にどれだけいるか後から追うことができる。

本当は春夏秋冬、4シーズンでやって季節ごとの変化を見てみたかったけれど、腰が重くて春は過ぎ去っていた。

今回の条件をまとめると、

  • おさわり厳禁
  • 撮影時間は1個体につき10秒ほど
  • GPSで発見した場所の座標を記録する
  • 持ち物はウェーダーとカメラのみ
  • 他の生き物の浮気観察あり

「オオサンショウウオの数を知りたい」という知的好奇心も満たせるし、生態や生息環境など深く知ることができれば、仕事にも活用できるので一石二鳥だ。

ちなみに、このモチベーションは開始1時間ほどで崩れ去ることになる。

【20:30】 オオサンショウウオ探し開始

探す区間の設定は簡単で、夜明けまでに探索できる範囲に限る。

時間にして、20:00~翌日4:00の8時間ほど。オオサンショウウオは夜行性なので、こればかりは変更しようがない。

20:25分ごろにスタート地点に到着して、オオサンショウウオ探しを始める。

アカザにイシガメにウナギ!怒涛の浮気ラッシュ

開始5分で1個体めを発見。

さくっと記録して次へ行こうと思いきや、アカザが何匹も行き来しているではないか!早々に浮気心を発揮して、しばし眺める。

ここからは、怒涛の浮気ラッシュで、イシガメとにらめっこをした後、大きなウナギを追いかけることになる。この時点で20分使ってしまったけれど後悔はしていない。

満足した。もう帰ってもいい。

モチベーションが大きく下がったところで、2個体目を発見。20:53分ごろ。

ここからは、できるだけ浮気しないつもりだったけれど、堰下に大量のアカザが群れていたのでやむを得ず眺める。

その後は、真剣にオオサンショウウオを探して、21:40に20個体めを発見。他の生き物に浮気しつつ1時間と少しで20匹だから、ぼちぼちのペースといったところ。

【23:54分】50個体めのオオサンショウウオを発見

日付が変わる前に50個体めを観察する。

このあたりですでに、

「なにしてるんだろう......」

自分の行動に対する疑問と虚無感が交互に訪れる。モチベーションも底をつき、川をひたすら上り、歩き、進むデスマーチと化していた。

とはいえ、収穫も少なくない。

オオサンショウウオの巣穴を発見。

すでに1個体陣取っていた。仕事でオオサンショウウオの巣穴調査をすることもあるけれど、長期間観察することはない。

今後、繁殖風景を観察できたらしてみたい。もしかしたら、巣穴じゃなく「ただ、そこにいただけ」という可能性もある。

オオサンショウウオが10個体集まる場所

夜明けが待ち遠しく思いつつ、足を進めているとオオサンショウウオが集結している光景を目にする。

右岸に5個体、左岸に5個体の計10個体!

水の流れが落ち込む場所なので、格好の餌場なのだろう。

ここまでの合計をまとめると、20:30~12:35の約4時間で80個体を観察。

当初の予定では50個体ほどが関の山かと踏んでいたので、思った以上に多い。ただ、場所によって多い少ないが顕著に分かれているのは面白いところ。

オオサンショウウオを仕事やプライベートで探して知った気になっていたけれど、未知な部分のほうが多いことを実感する。

夜明けまで3時間!ラストスパート

夜明けまで3時間を切ったところで道から照らして探すという「ゆとり観察」を発動する。

川に入らなくてよいので、楽ちんである。ただ、あまり遠いとGPSで正確な場所を落としにくい。微調整するのも面倒なので3個体ほどでやめた。

淡々と探しては記録、探しては記録を繰り返す。

【2:44】100個体めのオオサンショウウオを観察

3:00前、夜明けまであと1時間というところで100個体めのオオサンショウウオを観察する。

あくまで、個体数と生息密度、生息環境を深く知りたかっただけなので、数にはこだわっていないが「100」という数字には言いしれない魅力と達成感がある。

とはいえ、夜明けまでという縛りなので、その後も探し続けた。

1晩中オオサンショウウオを探しつづけたら108匹見つかる

4:00前、空が白んできたので、オオサンショウウオ探し終了!

結果はこのとおり。

  • 108個体:記録できた個体106、逃げた個体2
  • 大きさ:7cm~1m10cm、平均50~80cm(目測)
  • 所要時間:7.5時間(20:30~翌日4:00)
  • 総移動距離:9.2km

予想では50個体だったので、およそ倍の個体数。

108はあれか、75個体あたりから「100個体見たい!」という煩悩が生まれたからか。

あくまで、水上から目視できた数なので、小さな幼生や石・護岸の隙間にいる個体を含めると5~10倍では収まらないのではないだろうか。

ただ、この河川の近辺は近年の出水の影響で、損壊した護岸や堰が作り直され、オオサンショウウオが入ったり、登ったりできる場所が減っている。土砂崩れによる土砂の流入で、生息に適していない環境が以前より増えたのも事実。

ちょっとしたきっかけで個体数が減少してもおかしくなはい。楽観視はできないだろうな。

オオサンショウウオのことを抜きにした率直な感想としては、

「二度とやらん」

春夏秋冬の4シーズンやりたいと言ったが、あれはウソだ。

20個体あたりですでに目から光は消えていたし、80個体ごろには足が「もう無理、しんどい」と常に訴えかけてきていた。

とはいえ、オオサンショウウオについて以前よりも深く知れたのでよしとしよう。

1種類の生き物を真剣に探すと発見や学びが多い。論文や図鑑にも書いてあるけれど、実際に見たものは経験として蓄積するので忘れることがない。

今後の生き物観察やフィールドワークにも活かせるだろう。

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