山に行く時間ができたらば、とりまハコネサンショウウオ。新規ハコネサンショウウオ開拓。
これが正しい「ハコラー」(*ウオラーのなかでも特にハコネサンショウウオにしか興味がなくなった人のこと)の休日の過ごし方。
今回はハコネサンショウウオをナメてかかって洗礼を浴びた話。
固定観念こそ最大の落とし穴、だったはず
「サンショウウオ探しに"絶対"はない。固定観念は捨てて全力で挑むべし。」
特にサンショウウオに限った話ではなく、自然とはそういうもの。
狂気とともにサンショウウオ探索をしていた頃に幾度となく坊主や失敗を経験し、身についた考え方だ。
しかし最近、興味深いことに気がついた。
サンショウウオの経験を重ね、"サンショウウオ熱"が落ち着いてくるとまたしても固定観が湧き上がってくる。
ポイントに突撃する前にチラ見しただけで「ここいねえわー」
Google Mapで見ただけで「ここいるわー」
あの頃の「情熱と謙虚さ」はどこへ行った。
固定観念を前提に置いてしまって、全力で挑む気がまるでなくなっているではないかっ。
とはいえ、趣味のことで自分の感情にはなかなか勝てるものではないので、固定観念バリバリ、情熱も謙虚さも全くない状態で「ここ絶対いるわ」的なポイントに突撃することにした。
ハコネサンショウウオの洗礼
ここ最近、仕事がハードだったこともあり心身ともに疲弊していたのでそこから抜け出して山へ向かう足取りも軽い。
しかし、山の緑に触れることでヒーリングをしに行くわけではない。
サンショウウオを見つけた時に感じるあの劇薬に似た感覚をニンニク注射のように注入し、翌週を乗り切るためだ。
もう何かいろいろ間違っている。
数時間運転し「ここ絶対いるわポイント」に到着。
うん、この風景、そしてこの地形、絶対いるわ。
狙い通りだ、ようし、早速疲れたカラダにニンニク注射だ。
いつになく軽やかにウェーダーを着込み、ポイントへ突撃してみる。
あまりに「ここ絶対いるわ」感が強すぎてどこから攻めたらいいかわからなくなったがとりあえず1級ポイントを順に当たっていく。
おかしい。
ハコネサンショウウオがいない。
いやいや、ここ絶対いる、いるはず、いや絶対にいる。
背筋にひんやりと嫌な感覚。
落ち着け。
そうさ、もう少し上流まで登ってみればいいのさ。
上流へ登ること10分。
登ったそこには・・ハコネサンショウウオが好むであろう景観がドーン!
ただし水が全く流れていない。
やられた。
まさか既に水が枯れていたとは。
清々しい坊主、と言いたいところだが今回はいつになく「ここ絶対いるわ」と調子に乗っていたため、精神的ダメージが大きい。
久しぶりにガツンと効く逆ニンニク注射だ。
この逆ニンニク注射の効果だろうか、恐ろしいことに山奥にいるにも関わらず頭の中で翌週からの仕事のプランニングをスタートさせてストレスフルな状態に陥ったがそんな自分に微笑みかける1匹に出会った。
ナガレヒキガエル(成体)に初めて出会う
ここで初めてハコネサンショウウオがいなかったことに納得感が込み上げてきた。
これまでの経験から、ナガレヒキガエルが多く生息しているポイントではハコネは見たことがない。
(逆にハコネが多いポイントではナガレはいない、またはとても数が少ない印象)
渓流の中にナガレヒキガエルのおたまじゃくしを見つけたらそれこそ「ここいねえわー」のサインにしてきた。
これも自分の経験則なので、固定観念になるのかもしれない。
兎にも角にも、ナガレヒキの成体を見るのは初めてなので観察させていただく。
以前、外観が緑色かつ赤い斑紋が複数あるアズマヒキガエルに騙されたことがあるので慎重に。
目の後ろあたりを確認したら鼓膜に当たるものが見えなかったら、ナガレヒキガエルらしいぞ。
同定を終え、心の中でこれはナガレヒキガエル、ということにした。
緑と赤の混ざり方が「メカゴジラの逆襲」に登場した"チタノザウルス"を彷彿とさせる。
ナガレヒキガエルでは満たされないハコラーの次なる行動
一通りナガレヒキを観察させてもらったもののやはり満たされるものがない。
こんなとき、ハコラーはどう動くのか?
なんと、既存ポイントに車を走らせ、増水した時に3年幼生が集まるポイントを見極める鍛錬を始めたぞ。
これぞハコラー。
数時間の鍛錬ののち、3年幼生の増水時の行動パターンを習得したところで、「ハコネすくい」をはじめた。
それこそ金魚掬いのごとく、3年幼生がうじゃうじゃ集まるポイントで黙々とサンショウウオを掬う「ハコネおっさん」が山中にひとり。
客観視することで事の恐ろしさと虚しさをひしひしと感じるではないかっ。
今回のアタックは、
「ハコラーの行動を客観的に分析することで改善点を洗い出し、次回の探索に生かすためのいわばデータ収集活動だった」と無理矢理にオチとしてねじ込むことにしたのだった。