時期は11月後半。
連日の仕事で溜まりに溜まったストレスを海にぶちまけるべく和歌山へ。
死滅回遊魚狙いなのだけれど、まだ滅してない...よね。
一抹の不安を抱えつつ高速をひた走る。
潮見表もばっちり確認しているので抜かりはない。
いきなりチョウチョウウオ発見!
海沿いを走り目ぼしい場所に干潮のタイミングでエントリー。
見たところ南国チックな魚の姿はない。
30分ほど歩き回った頃、
小さなチョウチョウウオが岩の窪みからひょっこり顔を出す。
窪みの前で待ち伏せして出てきたところを網へ追い込む。
すると素直に入ってくれた。
「チョウハン」
初お目見えである。
泳ぎ方と言いおちょぼ口と言い可愛すぎる。
幸先が良いではないか。
この調子でガンガン行こうと思った矢先、
なんとな~くだが足場が少なくなっている気がする。
これはもしかするともしかするな。
干満のタイミングを間違えたようだ。
これから引いていくタイミングで入ったつもりが、ここぞとばかりに満ちてきている。
「マジで~」
心の声が漏れ出た。
新規開拓するも...
仕方がないのでこの場所を後にし、新規ポイントを開拓することにした。
干潮であれば良さげなポイントをピックアップしていく。
次の干潮は深夜12時頃。それまでのんびりすることにした。
午後8時。潮もかなり引いてきたので、
はやる気持ちを抑えずエントリー。
手当たり次第に探すもまったく気配がない。
先ほどの場所とは違い、手をつけると冷たいような気がする。
おまけに辺りを泳ぐ魚はメジナばかりで冬の海の様。
明らかに場所を外している。滅している。
そんな時にいつもお世話になっているogrさんから電話が。
これが正に助け船!
詳しくお話を聞いていると潮の当たり方で天と地の差が出るらしい。
ますます自分のミスチョイスが明確になってきた。
いくつかアドバイスをいただき、悩む間もなく移動する。ありがとうございます!
だいぶ潮も引いてベストタイミング。
おもむろに手をつけると少し温かい。こんなにも違うものか。
その証拠に辺りを泳ぐ魚の種類も段違いに多い。
これはなかなか熱い展開である。
初めはギンユゴイ。尻尾のストライプ模様がシャレオツである。
割と小さな潮溜まりでも群れているので捕獲はしやすい。
続いてネズスズメダイ。
光を当てると青いラインが浮かび上がってとても綺麗。
あと、写真はないけれどイチモンスズメダイ。
この魚も黄色と青が映える、いかにも南国チックな魚である。
ただ無知って悲しいよね。
綺麗な魚捕れたとウキウキして成魚の姿を調べたらその豹変っぷりに愕然。
気になる人は是非検索してみてほしい。
気を取り直して石を退けると赤い縞模様の魚を発見。
これはわからない!詳しい人に教えていただきたい。
そしてこんな大物も。ブダイ。
全然動かないので楽に捕獲できた。
飼うわけでも食べるわけでもないが捕まえる。そしてご満悦。
魚からしたらいい迷惑だろう。
弄んだ罰が当たったのか牡蠣殻で手をスッパリ。
軽く当たっただけであんなに綺麗に切れるとは思ってもみなかった。
「このままやってたらサメ来るやん」
一人で面白くもない冗談を言って採集続行。
放っておけば血も止まるだろうと思って。
思ってたんだけど、それがいつになっても止まらないものだから、
真顔で圧迫止血。(・_・)
寒くてかじかんでいたようで痛みはないけれど、傷は深かったみたい。
5分ほどでサメに食われる心配はなくなった。
それにしても場所によってこうも違うものなんだな。
さっきの場所では一つもなかったコーラルがあちらこちらにある。
そこから顔を出す魚が一匹。よく見ると二匹。
慎重に追い込み二匹とも無事ネットイン。
「タナバタウオ」
これは本当に嬉しかった。
“小さいシーラカンス”の様なフォルムもさることながら、
オレンジに縁どられた背びれがカッコ良すぎる。
海にはまだまだ知らない魚がいるもんだなと実感。
“未知”って楽しい。最近よく思う。
気が付けば夜が明けるまで夢中で網を振るっていた。
「いい歳してなにやってるんだろう」
日の出を見ながら呟く。
言葉とは裏腹に気持ちは清々しかった。