"ワラジムシ最強伝説"
巷でサンショウウオを飼育している人たちからしばしばそう聞く。
最強=餌として最も優れている、ということだ。
自分もサンショウウオを飼育してまだ1年足らずの初心者だが、
確かにワラジムシはどの個体も大抵食いつく。
そして野外でサンショウウオが見つかるポイントには大抵、ワラジムシもたくさんいる。
サンショウウオにとっては生姜焼き定食・唐揚げ定食・鯖の塩焼き定食.etc、的な安定感のある定番メニューなのかもしれない。
今回はそんな優秀な生餌・ワラジムシを繁殖させてみた話。
※あくまでひとつの例であり、これから紹介する方法が絶対に正解というわけではありません。
ワラジムシ飼育のための秘密道具
いきなりだが、これが我が家のワラジムシ飼育兼繁殖セット。
実際にはこれが2セットあり、1つは繁殖専用としてほぼ放置している。
このセットの中で、ワラジムシが地味に繁殖しているのだ。その方法を紹介してみたい。
水槽はコバエ対策の設計思想があるものがよい。上の画像のように、スリットが少ないものがおすすめ。一般的なカブトムシ飼育用のケースだと、
部屋の中にコバエが飛び回るという地獄を経験することになるかも。
コバエシートを噛ませてもいいけど、取り回しが若干面倒。
そしておすすめしたいのが、この二品。
左は100円ショップで購入した小さなトング。
もちろん本来は料理用なのだが、これが腐葉土をつまんで投入するのに最高に便利。
サンショウウオの床材に使用する水苔をつまんで投入し、
ケース内でちまちまと整える際も威力を発揮するので1本持っておいて損はない一品。
右はオイラーという名称で販売されている油指し。オイラーですよ、オイラー。
キャッチ―すぎる商品名も魅力的ではないか。これをどう使うかというと・・・
ケースに腐葉土を10cmくらいの厚みで投入し、
50mlくらいの水をオイラーに入れて少しづつ腐葉土の底付近目掛けて投入する。
この時、あまり水を投入しすぎるとワラジムシが繁殖しないようなので注意。
上のケースの写真のように、底部側面にしっとりと蒸気が現れるくらいが頃合い。
このオイラーもサンショウウオの飼育容器に少しづつ水を加えるような場合にも使えるのでおすすめ。
餌に餌をあげる
サンショウウオの餌になるワラジムシも当然生き物なので、食事は必要になる。
飼い始めたころは「ワラジムシごときにわざわざ餌などくれてやるものか。」
という暴君のようなコンセプトで野菜の切れ端などを入れていたのだが、どうも人気がない様子。
そんなとき、余っていた乾燥赤虫を与えてみると・・・
これが大当たり。我が家ではこの乾燥赤虫を与え始めてから、ワラジムシが繁殖を始めたように感じる。
まあ単なる偶然かもしれませんけど。
腐葉土にオイラーで水を染み込ませた床材のうえに野外で拾ってきた落ち葉を散らし、
適当な餌台を真ん中に配置して、こんもりと赤虫を盛る。
そしてワラジムシを200匹ほどぶちまける。 この数なので数日で赤虫は食べ尽くされてしまう。
週に1回ないし2回くらい盛っておけばよいかと。
繁殖させるには過密飼育が大前提らしく、ここでケチると繁殖回数が少なくなり、
結果的に繁殖数も少なくなってしまうと思う。
過密飼育=ワラジムシたちに数多くの出会いを提供して恋してもらう、ってことだ。
自分は利便性を優先し、ネット通販でこのイニシャルなワラジたちを購入した。野外採集も良いと思う。
気合いと根性さえあれば。
永遠のライバル・コバエが発生したら?
虫屋さんに記事を書いていただいた方が100倍濃厚な知識を披露してもらえそうだが、素人ながらコバエ対策をしているので参考までにご紹介。
まずは1930年発売(!)という、元祖ハエ取り紙を購入する。
今の時代、コバエ対策用品は多種多様に存在しているのだが、ただ純粋に1930年発売のスーパーロングセラーを使ってみたかったのだ。
説明書通りに外紙を剥がし、本体をワラジの水槽天面にぶつからない程度に引っ張り上げる。この姿はまさにオロ●ミンC。我が家ではハエ取りの塔と呼んでいる。あとはそのままワラジの床材に突き刺すだけだ。
実力の程はまずまず。塔の壁面(茶色の部分)の粘着物質にキャッチされたコバエの姿を散見できる。最新鋭のコバエ対策グッズの方が実用的かもしれないが、コスパは最高のはずだ。
重要なのはコバエが大量発生する前にハエ取りの塔を建築すること。コバエが大量に発生してしまったら、ワラジだけを丁寧に選別して床材を丸ごと交換する(コバエが床材に産卵して大量に発生しているため)という地獄が待ちうけている。コバエを検知したらなる早で対策を講じよう。
餌にも愛が芽生える
以上のように準備が整ったら、あとはひたすら放置。赤虫がなくなったら数日経ってから盛る。
どんな生き物も、常に餌がある状態をキープするのは良くない気がする。
最初に投入する数にもよるが、
200匹ほど入れておくとおよそ1か月に1回くらいのサイクルで腐葉土内で産卵するようだ(この辺りは感覚値なので間違っていたらごめんなさい)。
すごくわかりづらいのだけど、腹に白い卵を抱えている個体を確認できるようになる。
しばらくすると極小サイズのミニワラジたちが一生懸命に地面に這い上がろうとする姿を目視できるようになる。
彼らがこれから辿る運命はサンショウウオの餌なのだが、
このような生命の営みを目の当たりにすると、餌にするのが一瞬だが忍びなくなる。
実際、うちの息子はサンショウウオよりもワラジムシの観察の方が好きなようだ。
ドライに考えればただの"餌"なんだけど、副産物的に繁殖や摂餌などの生命活動も観察できるので、
非常に興味深い生餌であることには変わりないのだ。
これからも愛するサンショウウオたちのために、美味しいワラジムシを繁殖させていこうと思う。