“天然記念物”オオサンショウウオのいる場所がまったく“天然”じゃない

やらなければならないことが山積みの毎日。「一難去ってまた一難」とはよく言ったもので、常に何かしらの問題を抱えながら生きるのが人生なのだと最近理解してきた。そんな重いものを首からブラ下げながらも、ときに頭をすっからかんにして“ガス抜き”もとい生き物観察は必要である。今回、一方的にお付き合いいただく相手はお馴染み「オオサンショウウオ」。「またかよ」と声が聞こえてきそうだが、お付き合い願いたい。一方的なお願い。

三面護岸にも屈しないオオサンショウウオ

家族が寝静まったタイミングを見計らって夜の世界へと繰り出す。とは言っても、なんてことはないいつもの散歩コースだ。川のせせらぎに耳を傾けながら、ぽつぽつと歩く。ふと、足元の水路に目をやると、こちらにもなにやら歩く姿が。

オオサンショウウオ
こちらはのそのそといった具合。

水深もない小さな小さな水路、おまけに三面護岸ときている。

オオサンショウウオ

獣が来たら一発で襲われそうな状況なのにまったく動じる様子はない。いや、もしかしたら超焦っているかもしれないが。

巨体に反してどこにでも入っていく

オオサンショウウオ

「どうしてこんなところに」そう思う人もいることだろう。想像に反してオオサンサンショウウオの行動範囲はとても広い。かなりの傾斜でも手のひらのグリップ力をきかせてぐんぐん上るし、陸上を移動することも珍しくない。現に京都の鴨川ではオオサンショウウオが歩道を歩き住民を驚かせている。

オオサンショウウオ

おまけに巨体に似合わず狭い場所にもすいすい潜っていく。「井伏鱒二の山椒魚」とはえらい違いだと毎回思う。

穴を掘るのも意外と得意

オオサンショウウオ

手はプニプニしていて赤ちゃんを彷彿とさせるかわいい手をしている。しかし、こう見えて意外なことに信じられないが掘ることが得意。巨石は流石に無理だけれど、砂利や砂であれば難なく掘り進める。以前、水中観察をしていた時、横穴にオオサンショウウオを見つけ、逃げ場もない小さな穴だったため悠長にカメラを準備していたら、驚くほどのスピードで奥へ奥へと掘り進む光景を目にした。

オオサンショウウオ

その時は「なかなかやりよる」と悔しさととともに称賛したのを覚えている。

向かうのその先は、、、

オオサンショウウオ

しばし観察をしていると上流にむけて移動を始めた。「のそっ、のそっ」っとなんとも緊張感のない歩みではあるが、表現を変えれば生態系の上位に君臨する「堂々とした風格」とも言える。後を追いかけると、ゆっくりと水路の奥へと姿を消した。

「その奥、行き止まりなんだけど」ボソッと呟く。呟いてから気付く。もしかしたら横穴があるかもしれないし、小さな隙間も掘れる場所もあるかもしれない。一本道に見えて意外と抜け道があるのかもしれないな。「まるで人生みたい」となんだかエモいことを言ってみたのはいいものの、ツッコミもなければ共感してくれる人もいないので、ちょっと恥ずかしい。じわじわと込み上げる羞恥心を置いていくように、足早にその場を後にした。

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