そういえば未だ自力で見つけていないサンショウウオみたいな生き物が1ついたことに気づく。
そしてこれまでに身につけたサンショウウオ探索術がそいつに通用するのか試してみたくなった。
奄美大島に生息するイボイモリである。
前提となる障壁
とは言ってもイボイモリ探索には様々なハードルがある。
- 天然記念物のため許可がなければ触ることはできない。
- 奄美大島では生息密度が低いと言われており生息場所をなかなか特定できない。
まず1は最大の障壁である。
見つけた瞬間や出歩いている姿を観察・撮影することしかできない。
そして2だが知人やガイド、経験者にヒアリングした際に彼らは「奄美大島のイボは難易度MAX」と口を揃えていたのでなかなか見つからないのだろう。
このような数々の障壁をリスクとして持参したまま奄美大島に飛んでも勝ち目はないだろう。
検討を重ねた結論として、
国から許可および委託を受けてイボイモリを含めた奄美大島の生き物を撮影している知人のお仕事に同行させてもらいつつ、自分のサンショウウオスキルが通用するのか試させてもらうことになった。
12時間
計算すると探索ができる時間は12時間である。
長いようで短い。
奄美空港に着陸後、食料の調達だけ済ませてすぐさまイボイモリが目撃されているエリアへ。
知人と空港で落ち合った直後から車内はイボトークに華が咲く。
「ポイントにすぐ到着しちゃうから食事は車の中で済ませてね」
おかしい。
ここは南国リゾート・奄美大島のはずだ。
有尾類の探索はなぜこうもストイックになりがちなのだろうか。
車内で弁当をかきこみ、お茶で流し込みつつグローブや長靴などの作業着で身を固めてよごれてもOKなリュックを背負い山中へ突撃。
おかしい。
ここは南国リゾート・奄美大島のはずだ。
気を取り直していざ森の中へ。
何度も訪れてはいるが夜間に車で走って表に出ている生き物を撮影するというスタイルが主だったので昼間に環境を把握しながら生息地を予測するのは思いのほか面白いことがわかった。
やはり昼間は良い。
地形や植生が手に取るようにわかるぞ。
次回から夜は生き物探しはやめて替わりに美味しい食事とお酒を楽しむことにしよう。
そう。
ここは南国リゾート・奄美大島なのだから。
いざアマミサンショウウオ探し
流水性サンショウウオが生息しているようなポイントはアマミイシカワガエルなどが陣取っているのでスルーし、他にサンショウウオが潜んでいそうな箇所を探す。
地形や地質が本州のサンショウウオポイントと異なるのでなかなかにターゲットが見つからない。
しばらく歩くとここならサンショウウオがいてもおかしくないであろう地形、湿度、雰囲気が揃ったポイントを発見。
探索を開始してすぐに見つかった。
これぞイボイモリあるある。
「あーーー紛らわしいっっ!!」
そう叫んだことがある方も多いのではないだろうか。
しかしポジティブに考えれば有尾類にとって居心地がよい場所ということだ。
そう信じて事を進めると、シリケンとは全く違うシルエットが目に飛び込んだ。
「出たぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!」
決して池の水を全部抜こうとしているわけではないのだが思わずそう叫んでしまい知人を驚かす。
奄美空港に着陸して2時間。
遂に自力でイボイモリを達成した瞬間だった。
残り10時間
最初の1匹はどうやら雌のようだった。
その後、1匹目を見つけた付近ですぐさま2匹目を発見。
こちらは雄のようである。
しかし繁殖期のサンショウウオのように狭い範囲に複数匹がまとまっていることはなかった。
繁殖地も見つけるという裏目標もあったのだが、おおよその傾向は掴めたものの繁殖地を特定するには至らなかった。
そのまま夜の部へ突入したものの目立った成果はなく、推し(アマミイシカワガエル)を観察しながらタイムアップ。
12時間にわたるイボイモリとの戦いは終わった。
そもそも触れないことや通いずらいこともあり探索術を身につけるのはなかなかに難易度が高い。
その難易度のおかげでまたチャレンジしたいと思わせてくれる、魅力的な生き物であった。