『タニガワナマズ』
まだ正式に分類されたわけではないので、
『タニガワナマズ(仮称)』なんだそうな。
その名前が耳に入り始めたのはたしか一昨年のこと。
“新種のナマズ”とSNSで騒がれ、
「ほんまかいな」
と話半分で読み流していたのを覚えている。
ナマズと言えば水の淀んだ場所に住む姿を思い浮かべる人も少なくはないだろう。
しかし、このナマズは水の綺麗な清流に住むらしい。
安易に想像しがたい。
だから“らしい”。
だが、友人から「タニガワナマズを釣った!」という報告が入り、
一気に真実味を帯びたのを覚えている。
血の滲むような苦労と膨大な時間を使ってたどり着いた一匹のナマズ。
その価値を認識したうえで場所から釣り方まで教えてもらった。
谷川でタニガワナマズ釣り
時刻は深夜23時頃。
到着してまず驚いたのは、かなりの水量と濁り。
2、3日前に局所的に雨が降ったとは聞いていたが、その影響か?
友人に電話で尋ねてみると、まぁこんなもんらしい。
「それならいいか」
ロッドを二本準備してぶっこみ釣りの準備をする。
エサはミミズ。鈴も忘れずに。
ゴーゴー流れる川の岸際で釣りを開始する。
しかし、1時間経っても鈴が鳴ることはない。
話によればカワムツなどのエサ取りが頻繁にミミズを奪っていくらしいが....。
友人に聞いてみると少し下流で普通にナマズが見れるという。
気分転換にウェーダーを履いてガサガサを開始。
入水して一つの疑問がうまれた。
「この水量で果たしてナマズが見れるのだろうか?」
踏ん張るのがやっとの流速の中、下流を目指す。
根性でガサガサすると結構な数のアカザが網に入った。
教えてもらった場所はと言うと大渦を巻いてナマズどころではなかった。
てか、流されたらアカンやつ。マジなやつ。
しぶしぶ釣り場まで戻り確認するもエサがそのまま帰ってくる始末。
「全然ナマズ見れんわ~」
友人に一報入れる。
川の状況がどんなもんか見たいと言われたので写真を送ると、
「めっちゃ増水しとるやんww」
と一言。
普段は水深50cm程だとか。
目の前の景色は1mを優に超えている。
平常時の写真を見せてもらう。
良さそうな場所だとミミズをぶっこんだ岩場にロッドを立てかけて釣りをしていた。
これには笑うしかない。
自分の根性が足りてないわけではなかったので少し安心した。
この時点で日をまたいで2時頃。
日の出まで3時間と言ったところか。
折角ここまで来たので最後までやり続けることにした。
それ以上にいろいろと教えてもらっておいて、
「釣れませんでした」なんてつまらない結果は申し訳なさすぎる。
一番のお恩返しは、
「最高に嬉しかった!ありがとう!」
だと思うので。
釣りに賭ける!
さて、どうするか。
疲労困憊なうえ大増水という事実が判明した以上、ガサガサは危険。
こうなったら釣りに願いを託すしかない。
ただ、無謀なガサガサで得たものが無いわけでなはい。
少し気になった場所があった。
対岸のほんの少しだけ流れの緩い岩の窪み。
そこにミミズを流し込む。
肝心の鈴はいつの間にかぶっ飛んでいたので、
ロッドを見つめ続けること5分。
竿先がわずかに揺れたかと思ったら大きく引き込まれる!
反射的に合わせを入れると同時に抜き上げる。
足元でバタつく魚体を見てしばらく佇む。
少しずつ実感がわいてくるとともに込み上げてくる“嬉しさ”。
改めてまじまじと見つめてみる。
透き通るような水と相まってとても美しい。
お腹はこんな感じ。
サイズは30cm程。可愛いい手乗りサイズである。
お口はこんな感じ。ワレテル!
淀んだ河川ではなく清流に住むナマズ。
場違いなような気もするが、水の綺麗さに負けずとも劣らない。
本当に素晴らしい魚だ。
この魚が今後どのような評価をされるのかわからないが、
“嬉しさ”と“達成感”が薄らぐことはないし、思い出が消えるわけでもない。
感動をくれた二人と一匹に感謝です。