「カジカガエル」という生き物をご存じだろうか。
アマガエルやツチガエルのような人里近い場所よりも、河川の渓流部に好んで生息するので、目にする機会は少ないかもしれない。
特徴はなんといっても、その美しい「鳴き声」。その透き通った鳴き声を聞くと、つい足を止めてしまう。
今回は、そんな特徴的な鳴き声を持つカジカガエルと出会ったので、じっくり観察してみた。
目次
カジカガエルとは
「カジカガエル」はアオガエル科カジカガエル属のカエルで、
- 本州
- 四国
- 九州
などの河川上流部に位置する渓流に多く生息している。
繁殖期の鳴き声が雄鹿に似ていることから、「河鹿」ということでカジカ。個人的にはオスの鹿の鳴き声を美しく思ったことがないので、「?」といった感じだが、このカエルの鳴き声はたしかに美しい。
岡山県の真庭市(湯原町)や山口県の岩国市(美川町)では、生息地を「国の天然記念物」としている場所もある。
カジカガエルとの因縁
鳴き声に定評があるカエルなわけだが、その鳴き声には嫌な思い出がある。
数年前、和歌山県でオオダイガハラサンショウウオを探していたときに、あまりにも数が多いうえに、常に鳴いているものだから、「寝ても覚めても鳴き声が耳から離れない」という現象に見舞われた。
もちろん、今ではその症状が出ることはないけれど、崖から落ちかけたりヒルに囲まれたりしたあのときの過酷な経験が呼び覚まされるので、少々複雑である。
カジカガエルを岡山にて観察する
カジカガエルを目的にしていたわけではないけれど、なにか生き物はいないかと渓流を散策していたときのこと。
川べりを歩いていると、岩の隙間からこちらをうかがう姿を発見したので近よってみる。
カジカガエル!
それもかなりでかい。
もしやと思って耳を澄ますと、「フィフィフィフィ」と、カジカガエル特有の鳴き声が聞こえる。それでも鳴いている個体は少ないようで、ポツポツ耳に届くぐらい。
繁殖期に入ったけれど、最盛期はもう少し先、といったところだろうか。
カジカガエルは擬態ガチ勢
さて、改めて足元でじっとしているカエルを観察してみる。
渓流に住むだけあって見事な「保護色」。河床に上手く擬態していて、一度見失うと再発見はなかなか難しい。
よく見ると目まで同じ色と模様。「擬態ガチ勢」である。
泳ぎはそれほど上手くないようで、流れに乗ってたどり着いた石によじ登る。流れが緩い場所では、川底の石の隙間に体をねじ込んで隠れようとしていた。
まぁ、カエルがこんな場所を泳いでいたら、イワナなどの渓流魚に食べられるだろうから正しい選択だと思う。
鳴き声がよく話題に挙がるけれど、渋い見た目も素晴らしい。体格はカエルらしいのに、色や模様は一般的なカエルとはちょっと違う落ちついた雰囲気。
そこに、「ケロケロケロ」とはかけ離れた「フィフィフィ」。
カエルのなかでも、かなり「個性的」ではないだろうか。穴が空きそうなぐらい見つめながら観察していると、危険を感じたのか本流に乗って下っていった。
カジカガエルは地味だけれどカエル業界では個性的
カジカガエルは一見、地味だけれど、
- 生息地
- 外見
- 鳴き声
といったように、カエル業界では意外と個性的だと思う。
鳴き声は聞こえるのに意外と見つからないカエルだが、機会があれば「鳴いては近付き止まっては耳を澄ませる」そんなかくれんぼを楽しんでみてはいかがだろうか。
見つけたとき、鳴き声とのギャップに驚く人も多いはずだ。
カジカガエルの観察を動画で見る
別日にカジカガエルを観察したときの動画です。
探し方や間近で鳴く場面をあるので、ご覧になってみてください。