「ヒダサンショウウオを一緒に観察しませんか?」
唐突なLINEに目を通すと、以前勤めていたバイト先の後輩、K君からだった。どうやら成体がなかなか見つからないらしく、苦労しているようだ。
しかし、この時期、地元のサンショウウオエリアは積雪でポイントにたどり着くことすらできない。それなら西に行くしかない。
種類で言えば、「ヒダサンショウウオ」なら可能性が高いか。
雪から逃げるようにして決まった今回のヒダサンショウウオ探し。そして新規開拓。からのガイド。ハードルは高いけれど、それはそれでやりがいがある。
目次
案の定ハードル高めな関西のヒダサンショウウオ探し
ポイント近くのコンビニに集合して、いざ1ヶ所目のポイントへ。
この日のために下調べは入念にした。つもりだけれど、細かい部分は現地の情報を元に判断していく方が賢明だ。
細かい道を抜けて林道に入ったのも束の間、最初で最後の難関「ゲート」が立ちはだかる。これはUターンするしかない。
いや~幸先が良い。皮肉を交えながらも次のポイントへ。すると2ヶ所目、3か所目と続くゲート。
絶好調のサンショウウオ探しだ。若干、雲行きが怪しくなりながらも4ヶ所目に到着すると、ここはゲートがない。
やっとのことでサンショウウオ探しの土俵に立つことができた。
環境とは裏腹にサンショウウオの気配なし
意気揚々とウェーダーを履く2人。
新規開拓ということもあって、時間をかけず上流を目指す。途中、砂防ダムを1つ、2つと越えるも気配なし。
やっとのことで大きな滝を巻くもサンショウウオのサの字もない。このまま時間をかけても微妙なので、下山して次のポイントを目指すことにした。
場所を大きく変えて新天地へ
ゲートが多く、標高を上げてもパッとしない。
おまけに観光客が多くて車の行き交いも多い。
「これは求めているサンショウウオ探しではない」と内心思ったので、大きく場所を変える。もはや山の反対側。
道中にある良さげなポイントも横目に見たけれど、入渓するにはいたらない。ほぼノンストップで移動してポイントに到着した。
準備をしながら話すと、いろいろな場所でサンショウウオ探してみたけれど、成体が観察できず現実味を帯びないとのこと。
自分も探し始めて間もない頃はまったく見つけることができず、「ヒダサンショウウオは絶滅した!」と1人山に吠えていたことがあるから気持ちがよくわかる。
さらに聞き進めると、「自分で探してみて大変さがわかったから、気軽に場所を聞けなかった」
今回の観察までに期間が空いたのはそういうことだったのか。そう思うと同時に、自分の足で探して「ポイントの価値」に気付いて配慮してくれていたことが嬉しかった。
そこまで言われたら見つけるしかない。気持ちを入れ替えて沢に向かった。
関西のヒダサンショウウオ発見!
道をゆっくり下っていくと小さく水量も少ない沢が見えた。
良い意味でくさいポイント。サンショウウオの匂いがプンプンする。
探し始めて5分。30cmほどの岩を退けると、目をひく柄の生き物がビクッとしたのが見えた。
関西のヒダサンショウウオとの出会い。無事に見れたことに胸をなでおろす。
いたことを伝えると、それでも半信半疑というようにやってきたが、手の中のサンショウウオを見てとても驚くと同時に感動していた。見つけられない期間が長いと、半ば幻獣のような存在に思えてくるので無理もない。
この辺りのヒダサンショウウオは斑紋が細かく非常にきれいだ。惚れ惚れして写真を撮っていると、5mほど上流から「いた!」嬉しそうな声が聞こえてくる。
自分で見つけたのだから嬉しくないはずがない。人が喜んでいる姿を見ると、こちらも嬉しくなってくる。
関西のヒダサンショウウオ探しを終えて
その後は彼が1匹見つけて、自分が別地点でもう1匹発見の計4匹を観察。
満足のいく結果、そして満足してくれたようでなにより。
最近は自分で見つけるよりも見つけた人が感動している姿を見る方がやりがいを感じることが多い。生き物が好きなことに変わりはないけれど、観察にのぞむ姿勢は変わっていくのかもしれない。