『カスミサンショウウオ高地型』
自分の手で初めて採集したサンショウウオ。
思い入れがとても深いサンショウウオ。
一年ぶりの再会を果たすべく、
山へと向かう。
標高が高いだけに、
流石に寒い。
電光掲示板には嘘のような数字が光っている。
車から降りるとその数字に嘘偽りがないことが痛いほどわかった。
「もって一時間...」
それ以上は少しきつい。いや、かなり。
季節外れのニョロリ
寄り道せずに去年産卵していた水辺へ足を進める。
見たところ、なにもいない。
ただただ落ち葉が積もっているだけだ。
この中のどこかにいるだろうと思い、
おもむろに網を入れる。
すると予想外の生き物がにょろにょろ動き回っていた。
カスミサンショウウオの幼生。
この時期にしては珍しい。
すでに産卵した親がいるのだろうか。
謎である。
辺りを見ると、ちらほら確認できるが、
数はそう多くない。
その後も網に入るのは幼生ばかり。
成体の姿はない。
周辺も探したがいないようだ。
水辺に数匹はいるだろうと踏んでいたので
想定外の事態に少し焦る。
気を取り直して、山の奥深い場所へと移動する。
水辺に来ていないのであれば、
おそらくこの辺だろう。
ふと時計を見ると日付が変わっていた。
時間的にも寒さ的にも長居はできそうにない。
寒さに震えつつ、かなり大きな倒木を退けると、
一気に安心する。
無事再会。
しかも一匹だけではない。
一つの倒木の下にこれだけの数がいるとは。
種に限らずサンショウウオは一匹見つけると、
近くに複数いることが多い。
水辺からはかなり遠い。
自分が見つけきれていない産卵場所があるのだろうか。
それともこの場所から移動するのか。
産卵を控え、丸々とした個体も。
他の生き物が静まる時期に賑わう『サンショウウオ』。
退屈な冬を楽しいものに変えてくれる存在。