「ナミゲンゴロウ」
長年探し回ったけれど、姿を見ることは叶わず半ば放置していた目標の1つである。岡山では泥にまみれながら県北から県南まで探し歩いた。
しかし、あまりの気配の無さに個人的に「絶滅認定」した背景がある。
今回は、そんな宿敵と決着をつけるべく「ナミゲンゴロウ探し」に挑戦する。
目次
ナミゲンゴロウの生息地に足を運ぶ
今まで辛酸をなめてきたナミゲンゴロウ探しだが、今回は秘策がある。
それは「友人に案内してもらう」こと。
宿敵との決着が他力本願で良いのかと言われそうだが、一向にかまわない。自分で見つけたければ改めて探せばいいし、なにより善意で言ってくれているのだから断る理由はない。
というわけで、連れてきてもらったナミゲンゴロウの生息地。事前にどんな風景か聞いていたけれど、予想以上に広大な風景に舌を巻く。
「ここからちっこいゲンゴロウ1匹を探すのか」。
満ち満ちていた自信が吸い取られるのを感じつつ、ウェーダーを履いて水辺へと向かう。
ナミゲンゴロウ探し
水路を確認すると限りなく濁っていて生き物は見えない。
水深はどんなもんかとタモ網を伸ばしてみると、だいたい腰上ぐらいの水深。さらに、底には大量の泥が堆積しているではないか!
「タモ網しんどい!」
戦う前から弱音を吐きつつ、泥沼のような水路に足を入れると案の定「ズブズブッ」とモチベーションを刈り取る音がする。足を進めるごとに笑顔から真顔へ近づいていくが、こんな機会はなかなかないので、期待しながらガサガサ開始。
すると、なんと!大量のアメリカザリガニが網に入った。先ほどにも増して真顔になったのは言うまでもない。
ナミゲンゴロウどころか水生昆虫もいない
フィールドが広いものだから、良さげな場所を探すもなかなか見つからない。
水温が低く、水生昆虫もかなり少ない模様。どうやら雰囲気が変わっているらしく「農薬をまいたのかも」と恐ろしい言葉聞く。農薬はゲンゴロウには大打撃で、数を減らした原因Top3に入る。
雲行きが怪しくなってきたので、大きく場所を変えてみる。
ナミゲンゴロウを発見!
むやみにガサガサしても時間の無駄と判断して入水をやめ、上からひたすら水路の様子を観察してまわる。
やはり水生昆虫は少ないようで、雰囲気のある場所でガサガサしても、ときおり「ヒメゲンゴロウ」や「コシマゲンゴロウ」が入るばかり。
「由々しき事態である!」
いよいよボウズの危機感が出てきたころで、少し雰囲気が違う水路が目に入った。水生植物が多く水温も高い。
気配を消して水面を眺めていると、今回初の「クロゲンゴロウ」がスイスイ~っと視界を横切っていく。
「これは…脈あり?」
ポイントを濁らせたくないので、もう少し観察していると今度は黄色く縁どられた大きなゲンゴロウが気持ちよさそうに泳いでいく。
「ナミゲンゴロウ!!」
声には出さずテンパっているとゆっくりと沈んでいく。本当にいた!生息しているのはわかったから、あとはどう捕まえるか。
とはいえ、網1本しかないので、これに頼るしかないのだけれど。
痛恨!ナミゲンゴロウを逃す
その後も、呼吸するために定期的に水面に顔を出すので、そのタイミングを狙うことにした。
しばらくすると、警戒心ゼロで浮いてくるナミゲンゴロウを発見。狙いを定め息を止めて、思いっきり網を振るう!
すると、なんと!
何も入っていない。やらかしである。ナミゲンゴロウの機動力を見誤ったのが敗因だろう。
体がデカイだけに泳ぐスピードがとても速く、網が入る直前に逃げてしまったようだ。自分の不甲斐なさに打ちひしがれながら、周囲をガサガサしても姿を見せることはない。
やってしまった感は否めないが、新しい作戦を立てる。
ナミゲンゴロウを釣る
全体をガサガサしてもいいけれど、一度ポイントを荒らしてしまうと、その後の可能性が限りなくゼロになってしまう。
そこで選んだ方法が「釣り」。血迷ったわけではなく、カゴ網とエサを用意してない以上、現地調達できるものでやるしかない。
茎がしっかりした植物を引き抜き、その先にむき身にしたアメリカザリガニを結び付ける。突貫工事この上ないけれど、今できる最善の選択と信じて「天然素材のタックルで挑むゲンゴロウ釣り」を試みる。
念願のナミゲンゴロウをget!
ザリガニを投入して5分後。
穴が空きそうなぐらい見つめていた即席ロッドが大きく絞り込まれる!
「まさか、そんな」と思いつつ、半信半疑で引き上げるとぶら下がっているのはナミゲンゴロウ!感動しながら地面でバタバタしている姿を眺めていると、徐々に水辺へと向かっていくので慌てて確保する。
長年追いかけていた生き物が目の前にいると、感動半分、目標を失った寂しさ半分の不思議な気持ちになる。
ナミゲンゴロウを観察してみる
改めてまじまじと観察してみると、やっぱりデカイ。
クロゲンゴロウと比べてもこのサイズ感。今まで見てきたゲンゴロウのなかで間違いなく1番である。
淡い緑色に黄色い縁取りがきれいで、コガタノゲンゴロウとは違う黄色いお腹も特徴的だ。
予想通り泳ぎも達者。いつまでも眺めていられるほど、魅力的な生き物である。
ナミゲンゴロウ観察-完-
長年にわたって繰り広げてきたナミゲンゴロウとの因縁に終止符を打つことができた。
釣りや採集で遠征するたびに、良いポイントはないかと目を光らせる日々にもおさらばである。ただ、たちが悪いもので、目標が消えればまた次の目標が表れる。
「ゲンゴロウモドキ」も見てみたいし、岡山の絶滅認定も解除したいところ。
そんなわけで、ゲンゴロウ探しはもう少し続きそうだ。