夏の暑さもどこかへ行ってしまい、むしろ肌寒い秋の初め。この時期はオオサンショウウオの繁殖期にあたり普段とは違った行動をとる。それが“遡上”である。繁殖場所を求めて上流に向かう。早い個体は7月頃から移動を始めるが8月、9月と大きくずれ込むことも珍しくはない。今回はそんな一風変わった「オオサンショウウオの大移動」を観察してみた。
オオサンショウウオの生息地へ
中国地方のとある山間部。民家がぽつぽつと並ぶ何の変哲もない“The 田舎”である。近くに街灯はなく月明りだけが薄っすらと川面を照らしている。コンビニもまともに飯を食べる場所もないけれど、空気は澄んでいて星がとても綺麗。それだけで十分居心地がいい。
第一オオサン発見!
ヘッドライトを準備してなにげなく周囲を照らすと「のぺ~」としたでかい物体が道の真ん中で居座っている。こんな時間にこんな場所をほっつき歩いているのは自分かもう一種だけなのでわかりやすい。「なにゆえこんな場所に?」そう思われるかもしれないが、オオサンショウウオが陸上を歩くのはそれほど珍しいことではない。
上流を目指す際に堰などの障害物があれば上陸して迂回する。壁をものともせず越えていく姿はなんともたくましい。
あたり一面オオサンショウウオ!
ここまで登ってきている個体がいるのであればこの下には・・・。1m程の段差の下を見ると驚きの光景が広がっていた。オオサンショウウオの大渋滞である。堰を迂回すべく所狭しとひしめき合っている。
壁面に足をかけ滑って転げ落ちる姿も。この光景を見てふと頭をよぎる。
土にまみれる茶色い頭でっかちな生物。
「ツチノコやん」
“ツチノコはオオサンショウウオ説”をここに提唱したい。よく見ると陸上だけにとどまらず水中でスタンバっている個体もちらほら。オオサンサンショウウオのインフレがここに。
オオサンショウウオがこの場所に溜まる理由
この場所に多くのオオサンショウウオが溜まっているけれど、毎年こうだったわけじゃない。ここの堰は去年の出水で大きく壊れ、新しく造られたもの。傾斜が急で足のかける場所はなくサンショウウオが登るには厳しい。
それまでは登れていた場所が通行できなくなった結果、この場所に溜まり時間をかけて迂回しているのだろう。仕方ないっちゃ仕方ないがオオサンさんには人間側の都合でご迷惑をおかけしております。
おわりに
オオサンショウウオの大移動を目の当たりにして、感動したのと同時に取り巻く環境は刻一刻と変わっていることにも気付く。人間の生活もかかっているため、一概に「生息環境を守れ」とは言えない。言えないが、相手が自分で環境を変える力を持たない以上、人間サイドが気を遣う必要はあるだろう。お互いにとって“良い妥協点”を探す必要がありそうだ。
こちらの記事も合わせてどうぞ!