時期は2月。
少し遅いけれど、止水性サンショウウオ観察すべく岡山県に出向く。
目的は「セトウチサンショウウオ」。
新種になったばかりの小型サンショウウオで、毎年1回は足を運び、生存確認している。イノシシの被害やら水辺の縮小によって、年々環境は悪化しているのでちょっと心配。
今年も無事に出会えると良いのだけれど。
目次
“新種”のセトウチサンショウウオ
「そもそもセトウチサンショウウオってなに?」という人のために少しだけご紹介。
セトウチサンショウウオは少し前まで「カスミサンショウウオ」と呼ばれていたものの、2019年に分類され違う種類となったサンショウウオ。
要するに、カスミサンショウウオって呼んでいたものの中に、数種類のサンショウウオが含まれていたから分けました、というお話。そんなわけで、新種といっても最近見つかったわけではなく、ずっと確認されていたもの。
生息範囲は、
本州:岡山、兵庫、大阪、和歌山
四国:香川、徳島
普段は山中で生息しており、産卵期に湿地や水たまり、みぞなどの水辺に降りて産卵する。山の奥深くというよりも、人里に近い場所に生息しているので開発や農作業(みぞ掃除など)といった影響を受けやすいたく、生息環境は減少傾向。
おまけに、産卵場所である水辺はイノシシがぬた場として利用するため、食べられてしまうことも少なくない。
そんな“平和”とは呼びにくい環境なので、毎年気になってしまうわけです。
セトウチサンショウウオは....どこ?
県南のとある里山に到着。
この時期であれば、入水してすでに産卵していてもおかしくはない。目を凝らして水たまりを探すも姿はおろか卵嚢すら見当たらない。
「マジ?」
苦労することはないと思っていたのにこの展開。心配が的中してしまったのだろうか。
セトウチサンショウウオ発見!
開けた場所にはいないので、水底に積もった落ち葉をそっとどけてみる。すると、見慣れた顔がひょっこり現れた。
ぷりぷりに肥えたコンディションの良い個体だ。今年も無事だったと、ほっと胸をなでおろす。
体長は10cm程度。茶色がかった背側と灰色の腹面が良い色合い。
しばし観察しているともの凄い速さで泥に潜っていく。そんな特技も持ち合わせていたとは。やりよる。十分観察できたので、そのまま見送る。
セトウチサンショウウオの個体数が激減?
潜り終わるのを見届けた後、周辺を見て回ったものの、姿はなし。
数年前に大規模なみぞ掃除があってから、個体数が激減。ゴミごと卵嚢やら幼生やらが掃除されてしまったからね。
人間側も生活がかかっているので、一概に“悪”とはいえない。けれど、少し寂しいのも本心。
また、イノシシによる影響も看過できない。水場は足跡だらけで、なかなかの荒れもよう。繁殖場の破壊と捕食、どちらもサンショウウオには脅威だろう。
ただ、これも必死に生きているだけで悪者ではない。ないからこそ、もやもやしてしまうわけだが。
まとめ:岡山の里山にてセトウチサンショウウオ採集!
今年も無事、セトウチサンショウウオを観察することができた。年々悪化する環境の中、負けじと水辺に降りてくるセトウチサンショウウオ。
イノシシから四六時中守るわけにもいかないし、地域の清掃活動であるみぞ掃除に口を出すわけにはいかない。それでも、周知できれば気にかけてもらえるかもしれない。
今後も微力ながら発信は続けていこう。
セトウチサンショウウオが気になる方はこちらもどうぞ!
初めてセトウチサンショウウオに出会った時のお話
セトウチサンショウウオ(カスミサンショウウオ)の飼育に関するお話