
寒さの堪えるある晩のこと。
岡山の県北に用事があったので、そそくさとやることを済ませ空いた時間に川を眺めながら散歩をしていた。
すると、なにやら水中でたたずんでいる生き物を発見。

自然界ではあまり見かけない蛍光色に近いピンク色の“なにか”。にらめっこすること一分。こちらの存在に気付いて身をひるがえした瞬間、正体がわかった。
「アマゴ」だ!
婚姻色で赤く染まるアマゴに遭遇!

普段見慣れているアマゴとはかけ離れた色彩をしている。繁殖期で“婚姻色”に染まっているようだ。それにしても美しすぎじゃない?この魚。
アマゴってどんな魚?

ご存じない人もいると思うので、アマゴのご紹介。
アマゴは本州、四国、九州に幅広く分布しており、河川の中でも上流域に住む渓流魚である。
アマゴには河川で一生を過ごすタイプと海に降るタイプがいて、河川のものはアマゴ、海に降るものはサツキマスと呼ばれる。

よく似た魚にヤマメがいるけれど、体側に朱点があればアマゴ、なければヤマメと区別できる。
また、釣りの対象魚としても人気。餌釣り、ルアー釣り問わず狙えるのも魅力の一つである。もちろん、食べても美味しい魚だ。
アマゴの生態をしばし観察

さて、本題。こちらの個体はアマゴ。
繁殖を控え婚姻色に染まり鼻先が若干湾曲しているからオスかな。普段のスマートな外見はどこへやら。
これはこれで、とても綺麗でかっこいいので良しとする。それにしても、一向に逃げる気配がない。

河川での夜間潜水をしているとわかるけど、夜の渓流魚は本当に鈍い。
素手で捕まえられるほどに。ライトに気付くとパニックになって大暴れするけれど、慎重に近付けば大型のイワナやアマゴでさえ簡単に捕まえることができる。

それにしても、移動範囲が狭いから、この場所を産卵場所と決めてメスを待っているのだろうか。ただ、この場所は河川の支流の支流で泥底。環境としてはお世辞にも良いとはいえない。
その証拠に、この場所でアマゴを見ることはほとんどないので、期待薄だと思いますよ、アマゴさん。
あとがき:アマゴの婚姻色に一目ぼれ

この翌日、流石にもういないだろうと川をのぞくと…いる。
その後、一週間観察を続けたところ、ずっと同じ場所で泳いでいる。
やっぱり待っているんだろうな。

いつやって来るかもわからない相手を一心に待つ姿を見て、何ともいえない気持ちに。さすがに、二週間が経ったころにはいなくなっていた。
大雨が降ったタイミングで移動したようで。
良い出会いがあるといいね。