岡山県でヒダサンショウウオやハコネサンショウウオを探していても、頭の片隅にいるサンショウウオがいる。
『ブチサンショウウオ』
岡山県内では圧倒的にヒダサンショウウオが多く、何度か本格的に探しても姿を見ることはなかった。
挙句の果てには広島県まで遠征して見つけたけれど、「岡山県では見つけられていない」という、ほんの少しモヤっとした気持ちを抱えていた。
見たいサンショウウオを一通り観察できて一息ついている状態なので、原点回帰かつ「経験を積んだ今の自分ならなんとかなるのでは?」
そんな根拠のない自信とともに岡山県でブチサンショウウオを探してみる。
ちなみに、岡山県のブチサンショウウオは2019年に「チュウゴクブチサンショウウオ」に分類されています。
目次
岡山県のブチサンショウウオはどこにいる?
既存のポイントはヒダサンショウウオであふれかえっているため、今回は新規開拓のみ。
改めてGoogleマップとにらめっこして場所を絞り込んでいく。成長しているかは別として目星の付け方が昔と違うのはおもしろい。
ただ、最終的な結果は過去に自分が「サンショウウオいそう!」と判断してマークしていたけれど、足を運ぶことがなかった場所だった。
過去の自分と意気投合したようで、縁のようなものを感じる。
ブチサンショウウオ探し開始!
ナビに場所をセットして、意気揚々と一ヶ所目のポイントに向かう。
ポイズンリムーバーやら一眼カメラやら大荷物をバッグに入れ、ウェーダーを履く。さすがにこの時期になると少し暑いけれど、
- 防水
- 防虫
- 防御力アップ
という能力が手に入るので、新場所では履いていくことが多い。
歩き始めて10分。疲れて帰りたくなる足を無理やり前に出す。ところどころ良さげな場所があれば散策してみるものの、サンショウウオの気配はない。
探しながら1㎞ほど登ったところで「ここは違う」と判断して下山することにした。その沢の1級スポットを探していなければ、その場所にはいない、もしくはいても個体数が少ないと判断する。
個体数が少ない場所で時間をかけるよりも、多い場所を探すことに時間を費やすスタイル。
二ヶ所目は山の最奥!
本日二ヶ所目は山のかなり奥の辺境の地。
自然度の高さに驚くとともに、「ここでキャンプして帰ったら幸せ」と思った。そんな早期ハッピーエンドを迎えるわけもなく、もう少し車を進める。
なかなかのダートコースで油断するとパンクする危険がある。もちろん、携帯の電波もないので慎重に進むと、「これ以上は無理」と判断せざるを得ないところまで来た。
仕方なく車から降りて1本目の沢に突撃する。
ブチサンショウウオ!かと思いきやハコネサンショウウオ
沢の雰囲気は悪くもなければ良くもない。そこそこといった感じ。
おもむろに沢の石を持ち上げてみると、早々にサンショウウオ発見!一瞬ドキッとしたけれど、ハコネサンショウウオだ。
とはいえ、いつも見ている場所の個体とは少し色合いが違ったので興味深く観察する。ハコネ向きではない場所だったので、それはそれで新しい気付きになった。
気を良くしてそのまま沢の1番奥まで行ってみたものの、ブチサンショウウオどころか他の種類も顔を出すことはなかった。
すぐ横に沢が2本あったけれど、一旦保留にして徒歩でより標高の高い沢を攻めてみることに。
しかし、沢の水があまりにも少ないこと、延々と続いていてこれ以上は探す時間がもったいないという理由で最初の隣の沢2本を探すことにした。
サンショウウオの卵嚢を発見!ブチサンショウウオか?
時刻は16時。
こんな山の奥地で夜間観察は避けたい。
1本目の沢はハズレ。最後の1本に望みを託す。
探し始めて10分。なんとサンショウウオの卵嚢を発見!
石から外れて見えるところに流されていた。よく観察してみると違和感が多い。
見た目的にも場所的にもハコネサンショウウオではない。しかし、ヒダサンショウウオにしては色が白っぽくプリプリ感に欠ける。
産卵した直後で水を吸っていないから見た目が違うのかと思いきや、発生しているからそうではない。なにより、このあたりのヒダサンショウウオの繁殖期は4月初めから終盤にかけて。
発生段階から見ても少し遅い気がする。「もしかしてブチサンショウウオかも」そんな淡い期待を抱くと同時に、見つけないと非常にモヤモヤしたまま帰ることになると思うと緊張感が増してきた。
付近に親がいなかったことからも考えて産卵後。ということは、次回は親が完全に沢から離れていることになる。
その結果は明らかで、「答えを来年まで待つ」ということ。だれに与えられたわけでもないプレッシャーを抱えながら沢の奥へと進む。
卵嚢は水が枯れずイノシシに見つからない石の下に固定しておいた。
ブチサンショウウオを発見!
沢のなかの石や陸地の倒木を確認しながら進むけれど、気配はなし。
最奥で分岐した右側はダメで左側に最後の望みを託す。水量に乏しい、広葉樹と杉が混生している場所。
沢は石が少なく見られる場所も多くはない。「これはでかい宿題を残すことになったな」そんなことを考えながら進むと、いよいよ沢の最奥まできてしまった。
悔いを残したくなかったので、最後まで見てまわる。半ばというか完全に諦めながら沢の石を持ち上げて、くぼんだ陸地に目をやると、淡い青色が目に入る。
念願だったブチサンショウウオがそこにいた。
ブチサンショウウオを観察する
やっと見つけられた達成感と来年の宿題がなくなった安心感で心底ホッとする。
落ち着いたところでブチサンショウウオを観察してみる。最初に驚いたことはその「青さ」。
オオダイガハラサンショウウオやイシヅチサンショウウオに似た色味だけれど、散りばめられた白斑がコントラストになってより青さが際立って見える。広島で観察したものと比べても体色が明らかに異なる。
よく見るヒダサンショウウオよりもスマートな印象を受けるも、これは個体差があるので何とも言えない。
総論としては、「めっちゃきれいで最高」といったところだ。
【念願】岡山県のブチサンショウウオ観察|完
山を下りて車に戻った頃には21時を過ぎていた。
まる1日ブチサンショウウオ探しに費やしてしまったけれど、ずっと引っ掛かっていたものがスッと消えた。
落ち着いていたサンショウウオ熱がさらに落ち着いてしまうだろうから、「このさきどうするかな」とぼんやり考えながら運転する。友人と楽しむか、はたまたサンショウウオ探しで困っている人をガイドしてみるか。
とはいえ、疲れて頭も回らず、なにより満足感の方が大きかったので今はいい。
そのとき考えることにする。
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