『タンカイザリガニ』
この名を聞いたことがある人はそう多くないはず。
滋賀県高島市に位置する淡海湖に生息するザリガニなのだが、
ちょっと変わった境遇にある。
それは、
「保護される対象でもあり、駆除の対象でもある」
ということ。
そんな“不思議”なザリガニと出会ったときのお話。
タンカイザリガニを探す!
「タンカイザリガニ捕まえてみたいんだが!!」
友人に唐突にLINEを送る。
仕事で忙しいだろうに愛想よく返事をくれる彼。
あの辺りは圏外の場所もあるから急ぎで連絡をくれたらしい。
「人間できてんな~」と思いながら、
ザリガニについて教えを乞う呑気な自分。
なんか言葉にできない“差”を感じたが深く考えないことにした。
さて、聞いた話によるとそんなに難しくはないらしい。
とりあえず現場に向かってみることにする。
細い山道を抜け、いざ淡海湖へ!
気が付かないうちに琵琶湖がこんな具合に見えるまで登ってきていた。
途中で入場料を払う場所があり、
「生き物探しに来まして」
と受付のお姉さんに告げる。
「いくつになっても楽しいものなんですね笑」
ええ、楽しいですとも。
好きなものをいつまでも追い続けられるって、素敵やん?
自分で自分を慰める。
少し辛口な言葉をおばさん(お姉さんから降格)からいただき、
駐車場に車を止め、散策散策~。
こんなところにザリガニがいるのだろうか...
とてもザリガニのイメージからかけ離れた環境。
ちょっとした不安を抱きながら石をひっくり返してみる。
すると、サンショウウオっぽい外見の生き物がいるではないか。
タンカイイモリ。
ちょっとドキッとした。
その隣の石の下には...
タンカイサワガニ。
挙句の果てには....
タンカイカジカ。
なかなか見つからないものだね。
休憩もかねて岩に腰を下ろすと、
なにやら小さな石が動いている。
不思議に思って掴んでみるとまさかの!
タンカイイシガメ!
なに?茶番はもういいって?
そうは言われても見つからないものは見つからない。
旗色が悪いので少し場所を変えることにする。
どうせ来たんだから淡海湖(処女湖)にもよってみよう。
水も少なく、そんなに「うわ~!これが淡海湖か!」とはならなかった。
自分の感受性が朽ちているのが原因かもしれない。
感動の出会い!
気分転換も済んだのでザリ探し再開。
場所を変えてもやることは同じ。
ただただ石をひっくり返す。
しかし、そこで現れた生き物は今まで見たことがない姿をしていた。
【タンカイザリガニ】
やっと出会えた。
そう、この時感じる嬉しさはいくつになっても変わらない。
受付のおばちゃんに言ってやりたかったが、残念ながらここにはいない。
その後も続々と現れるザリ達。
アメリカザリガニと違って腕が青いのも特徴。
こんなbigなやつにも遭遇できた。
指を挟まれる三秒前。
笑顔が苦痛に満ちた顔へと変貌する三秒前。
油断大敵である。
それにしてもカッコいいね、ウチダザリガニ。
......
ウチダザリガニ?
【ウチダザリガニ Pacifastacus leniusculus trowbridgii】
そう、実は“タンカイザリガニ”は“ウチダザリガニ”なのである。
地元の人に地域特有の生物として守られてきた彼らだが、
研究の結果ウチダザリガニと判明した。
ウチダザリガニは“特定外来生物”。
駆除の対象なのである。
今まで守ってきたものが駆除される。
そんな話が納得できるわけはなく、現在でも駆除と保護で対立しているらしい。
人間のいざこざなど露知らず、水辺を闊歩するザリガニ達。
なんか滑稽だよね。