
実家に帰ると条件反射的に行きたくなる場所がある。
そう、サンショウウオのポイントだ。 記録的な暖冬だったこの冬だが、ついに寒波が訪れた。ポイントの環境もガラリと様変わり、冬の装いかもしれない。
行って、確かめるしかない。
遅れてきた氷河期
通い慣れたポイントの冬の姿を拝みにわざわざ訪れるとは我ながら酔狂である。
現地に到着したのは10:00AM、なのに氷点下である。車載温度計が-2℃と教えてくれた。ということは、サンショウウオ生息地は-3℃くらいだろう。
雪に埋もれているのだろうか?期待と不安を胸に、沢を登った。

沢がまるごとガリガリ君になっている。
スローシャッターで水の動きを捉えた写真のようではないか。これはこれでたいへん興味深い経験だ。
寒すぎるけど。
過去の栄光を捨て、新たな挑戦を
このポイントではサンショウウオを何度も見つけている。
しかしそのポイントはことごとく凍っている。さて、どうしたものか。
僅かに残った凍結していない個所を探ってみると、岩や落ち葉の下には猛烈な霜柱が。これでは寒すぎて地表付近では過ごせまい。
広大なポイントで、2時間ほどかけてこんな地味な戦いを繰り広げたがサンショウウオは現れない。

頭も体も過去の成功体験をしっかり記憶しているため、同じ方法で功を急ぎがちだ。
しかし、こういう時はちょっと目線を変えて、これまでと違うアプローチを試してみると良いことが起こるかもしれない。
ん?このくだり、どこかで聞いたことがある。
ビジネスシーンにおける”企業の生き残りと成長戦略”と同じではないか。もしくは有名なダーウィンの『進化論』だ。
変化を捉え、変化に適応したものだけが生き残ることができる。サンショウウオ探索に必要なマインドセットはビジネスシーンに通ずるものがあるのだ。

徹底した顧客志向
アプローチを変えたとしても、変えてはならないことがある。それは顧客志向だ。
しばし目を閉じて、サンショウウオの視点で、彼らのニーズを想像してみよう。
こんな凍った沢で冬を過ごしたいだろうか?自分がサンショウウオなら、こんな選択肢を考えるだろう。
- 寒さが届かない地中深くへ潜る
- 凍らない流水近くに潜む
- 暖かい場所に移動する
1なら、もはや人間が太刀打ちできない世界なので諦めるしかない。2は凍らないとはいえ、冷たいのでやりたくない。
消去法で3の可能性に賭けてみることにした。
日当たり最高の沢で
比較的流量が多く、凍結していない沢を見つけた。
しかも日当たり最高である。自分がサンショウウオなら、この時期の最優良物件だ。
しかしサンショウウオは生涯ほとんど移動しないとも聞く。他の沢からこの日当たりの良い沢に集まってくることは考えにくいが、生まれながらにこの優良物件を牛耳っているラグジュアリーな個体群が存在しているかもしれない。
居心地の良さそうな岩を選び、めくっていく。すると・・・

ハコネサンショウウオ幼生!なんと、この沢はハコネの住処だったとは。
外鰓も非常に小さく、ほぼ成体だ。おそらく3年目の幼生だろう。
さらにさらに。


まさかの成体まで!
背中の模様がヒョウ柄のようでオシャレ。ハコネの模様は地域差が大きいため、ハマる人はハマるらしい。
実は自力でハコネを出せたのは初なので、そういう意味でもこの発見は個人的に意義深い。
※あくまで個人の所感です。日当たりの良い沢にサンショウウオがいることを保証するものではありません。(おそらくただの偶然です)
おわりに

今までの成功体験を捨て、新しいアプローチに挑戦して成果を得ることができた。
何事も挑戦あるのみ。サンショウウオ探索を通じて、人生の教訓を反芻することができるとは。
サンショウウオ探索は人生の縮図なのだろうか?
たぶん、違う。絶対に違う。
