慣れ親しんだ流水性サンショウウオのようにコンスタントに止水性の新規開拓を出来たら面白いに違いない。
この冬の最大の収穫は遂に止水性サンショウウオのポイントを自力で開拓できたことだが、まだ1箇所を開拓したにすぎない。
既存ポイントには通い続け止水性の動向を把握しつつ、2箇所目を開拓すべくチャレンジを繰り返した話。
目次
結論: ボウズ続きでメンタルをやられる
いきなりの結論先行型。
止水性の新規開拓は想像以上にしんどかった。
以前にも記事に書かせていただいたことがあるけれど、実際に止水性の新規開拓を続けてみて身も心もズタボロになってしまった理由をもう少し深掘りしてみたい。
流水性のストレスは例えるなら表現がストレートなので突破口さえ掴んでしまえば割とコントロールが可能になるパワハラタイプ。
止水性は例えるならモラハラタイプだ。
ネチネチといやらしく"一発NG"ワードは出さずに長期間に渡り相手の精神を少しずつえぐるタイプのハラスメントだ。
この止水性ハラスメントが持つ要素は以下の5種類が考えられる。
1. ポイントを選定できない
作業は流水性の新規開拓と同じ要領で、自分で見つけたポイントや今まで人に案内していただいたポイントの地形を参考にしつつ、似たような地形と思われるポイントを地図上で探して地道にリストアップしていく。
ただし、広い地図からピンポイントに似たような地形をリストアップしようにも、生息環境や地形が限定的すぎるためなかなか似たようなポイントが見つからず、作業は一向に捗らない。
2. 情報量が少ない
詳細は伏せるが流水性と比べて生息環境の情報量が圧倒的に少ないためリストアップしたポイントを裏付けする根拠が弱くなる、要は「確らしさ」が低くなる。
3. 積雪が多い
今回一番メンタルをえぐられた要素。
日本海側は標高が低くても積雪量が半端ない。
苦労して選定した複数のポイントに向かうと、特に日本海側は自分の身長に匹敵するほどの積雪に行手を阻まれる。
少年期を北陸で生活していたにも関わらず、全く失念していた。
地形も見えないため甲乙の判断も難しく、たとえゴリ押しで突撃しても通常時の3-5倍の体力を奪われるだけだ(*筆者調べ)。
4. 保護区や私有地も多い
良さそうなポイントはまるごと天然記念物になっていたり、私有地のなかにあったりする。
これではなかなかに手を出しづらい、というか出せない。
5. 沼や野池にハマるリスク
現代で”沼にハマる”といえば"病的に何かに没頭する様"を差すことが多いだろう。
ただしここで意味するのは文字通り沼に没することである。
ある日、湿地で止水性を探していたときのこと。
両脚が膝上までズボッと埋まった。
サンショウウオ観察史上、最大の戦慄。
抜け出そうとするとみるみる脚が埋まっていく。
幸い携帯電話の電波は若干ではあるが拾えていたので警察に電話することも覚悟したが、たまたま太い木の枝が頭上に見えたのでそれを掴んで懸垂の要領で脱出することができた。
ジムに通っていてよかった。
もう一つ、真面目な話をすると山中にある野池には近づかない方がいい。
陸と水のキワはぬかるんでいて枯れ葉が積もっており雰囲気がよいためついつい近づきたくなるが、そこは底無し沼であることが多い。
命を危険に晒すこと間違いなしである。
束の間の癒し
すっかりネガティブキャンペーンになってしまったが嬉しいこともある。
たとえハラスメント要素たっぷりのブラックな職場であっても、「なぜあなたのような方がここに?」と問いかけたくなるような神が一人はいるものである。
その1つがニホンアカガエルとの出会い。
止水性の開拓を通じて初めて卵嚢や成体を見つけることができた。
流水性の観察で見飽きているタゴガエルにそっくりだが、どことなく品が良い。
ニホンという名を冠するだけあって和の佇まいも持ち合わせる。
そして好奇心をくすぐる大量の卵嚢。
なんとも魅力的なカエルだ。
いつでもどこでも出会えるカエルではないので、止水性サンショウウオとともに冬の生き物観察を彩るスターであることは間違いない。
おわりに
この記事を書いている現在、2箇所目の新規開拓は成功していない。*この記事のサンショウウオの写真は既存ポイントで撮影したものばかりである。
止水性サンショウウオのモラハラを克服することができていないということだ。
ハラスメント対応の定石である”相手にしない”という選択肢ももちろんあるが克服できればスキルアップ間違いなし、人間力もマシマシになるだろう。
自分の成長を信じてこれからも止水性サンショウウオとの戦いを続けていきたい。