初めて小型サンショウウオを見つけた場所。
サンショウウオ愛好家であれば誰しも思い出深い場所のはずだ。御多分に洩れず、筆者も初めて小型サンショウウオを見つけた場所には特別な愛着がある。
しかしその場所が今、危機に瀕しているのだった。
無残に破壊された生息地
その場所はこれまで今まで幾度となく訪れてきた。
ここはその業界の人々には有名なポイントなので、割と大勢の人が訪れているようだ。その証拠に、小規模な沢は原型をとどめないほど破壊し尽くされている。
手頃な岩や倒木は既に何度も何度もひっくり返された跡がある。見ているだけで切なくなるが、こんな環境でも僅かにサンショウウオが生息している・・・はずだ。
ひどく荒らされた環境のため、通常とは異なる捜索方法が必要となり、主に夜間に訪れている。(※夜間観察は視界不良のため転倒、滑落、野生動物の襲撃、 等のリスクが増加するのでおすすめしません。自己責任でお願いします。)
水が消え失せた沢
このポイントはほんの2年前まではたっぷりの水が流れており、それこそサンショウウオの幼生がちらほら泳いでいた。
しかし昨年あたりから沢全体が枯れており、ほぼ完全に水が消え失せてしまっているのだ。「消えゆく生息地」であることに変わりはない。
生存者を確認しました!
沢の地形は破壊され、湧き水も虫の息。
さらに生き物採集禁止エリアなのだがあまり認知されていないので採集圧もあるはず(密猟圧と言った方がいいか)。とてもサンショウウオが生息できるような環境には見えないが昨シーズンは奇跡的に成体を数匹発見できている。
破壊された沢ではなかなか狙いを定めることができない。体制を低くして丹念にライトで照らし、地道に探していくがなかなか見つからない。
今年はもう、生息を確認できないのか。
諦めかけたそのとき・・・
・・・ヒダサンショウウオ??
ここにはヒダサンショウウオしか生息していないから間違いないのだが、何か不自然だ。体の下半分が青白いのだ。
このカラーリングといえば・・・そう、往年の"カスミサンショウウオ高地型"ことヒバサンショウウオである。
消えゆく生息地で僅かに生息している個体が目の前で抜群の美しさを誇っている。何かを比喩している気がしてならなかった。
「準絶滅危惧種」と向き合う
今年も何とか生息を確認することができた。
しかし、産卵および幼生の姿は確認されていない。繁殖できていないのだ。
この個体は沢の環境が激変する前に既に成体になっていて、現在までゲリラ的に細々と生存していた個体だと思われる。
自分に出来ることといえば、探索のために移動した岩を元に戻すことと、この美しい生き物の実情をブログで発信することくらいだ。
何とも非力ではあるのだが、こらからも地道に発信は続けていきたい。サンショウウオ保護の認知拡大。その一助となるために・・・