繁殖活動の大きなマイルストーンである「産卵」を未だ確認していない、とある渓流。
他のポイントと比べ成体の発見数も少なく、本当に繁殖できているのか大いに疑問が残っていた。そんなポイントで嬉しい発見があった。
「ダメもと」に勝るものはない
訪れたのはヒダサンショウウオのポイント。
これまでヒダサンショウウオの記事を幾つ投稿してきただろう。そろそろGoogleの検索アルゴリズムにすら飽きられているに違いない。が、観察に行く度、新たな発見があるためもう少しお付き合いいただければ。
ここはもともと成体の数も少なく、本当に繁殖活動が成功しているのかにわかに信じがたいポイントだ。繁殖期にもほとんど成体を見つけたことがなく、もちろん卵嚢も確認したことはない。
そんな可能性の低いポイントだからこそ、「ダメでもともと」と何度も念じつつ、到着した。サンショウウオに会えなくても、何か生き物がいればそれでいい。こういうスタンスのときにこそ、奇跡は起きるものだ。
サンショウウオ産卵の動かぬ証拠
やはりサンショウウオの姿はどこにもない。
ただ、岩の隙間から聞き飽きたタゴガエルの鳴き声が聞こえてくるので、せめてタゴでも観察して帰ろうとした。
すると見覚えのある動き・・・とはちょっと違う動きが目に飛び込んできた。
タゴガエル幼生。
初見である。初見に勝る感動はない。
「なんだ、またタゴか」とは言わせないよ。
彼らの気合いと意地を垣間見て、感動に浸っていたのも束の間、近くに不自然に転がったアレを発見。
ヒダサンショウウオ卵嚢(の殻)!なんて卑猥な外観だ!
これはれっきとした「産卵に成功した証」である。これにはさすがに大興奮である。
とは言え、元気に泳ぐ幼生の姿を見つけないことには、安心できない。探索すること数十分。遂に、水溜まりに密集する幼生の姿を見つけることができたのだった。
ヒダの週末
この目で繁殖を確認するということが、これほど興奮するとは。
そして「ヒダの週末」が始まった。梅雨に突入し、沢が増水しようとも、めげずに毎週末、観察を続けたのだった。
繁殖できているのか、本気と書いてマジで心配していたのが嘘のように、30分程度の探索で100匹以上を発見するに至った。タイミング、水量、天気など様々な条件が揃えば大量に見ることができるのか、それとも今年は単に繁殖に大成功したということなのか、思いを巡らせるのも一興である。
おわりに
サンショウウオというと成体のイメージが強く、成体が花形であるのは間違いない。
しかし幼生にもぜひ注目してほしい。成体よりも容易に見つけられるし、水かさや天気、時間帯によって居場所が変わっていたりして、経過観察がとても楽しい。
幼生の観察は、成体の観察よりもタチが悪い。なぜなら、上陸するまでは高確率で発見できてしまうからだ。
坊主知らずの幼生観察。
そして毎週末に他の予定を入れられなくなるのだった。