ベッコウサンショウウオを観察して満足したかと思いきや、せっかく九州にいるのだからもう一種類のサンショウウオに挑戦する。
その名も『コガタブチサンショウウオ』。
小型サンショウウオのなかでも小柄で斑模様がきれいな種類だ。まったく情報がないので新規開拓になるけれど、がんばっていきましょう。
目次
コガタブチサンショウウオの本家は“九州”
突然だが、コガタブチサンショウウオと聞いて次の4種を思い浮かべる人もいるのではないだろうか。
- コガタブチサンショウウオ(九州)
- ツルギサンショウウオ(四国、徳島県、剣山)
- イヨシマサンショウオ(その他の四国)
- マホロバサンショウウオ(近畿、中部地方)
それもそのはず、これらは元々同じ種類とされていたが、2019年に細分化され別種になった。
つまり、少し前まで4種類すべて「コガタブチサンショウウオ」と呼ばれていたわけである。ああ、ややこしい。
今では九州に生息するものだけがコガタブチサンショウウオで、その他の種類にはそれぞれ名前が付いている。
せっかく九州にいるのだから、“本家”コガタブチサンショウウオを探してみようと思ったのが今回の経緯である。
コガタブチサンショウウオ探しin九州
コガタブチサンショウウオを探しということで、あまり標高を上げずに400~600m辺りを攻めてみる。
周囲には広葉樹と杉の木が混生していて、雰囲気は悪くない。手始めに林道入り口の石をひっくり返してみる。
もちろん、そんな簡単に見つかるわけがなく、ヨコエビやらヤスデやらがうろうろしているのみ。餌になる生き物が多く、土の状態も乾き過ぎず湿り過ぎずの良い状況で期待が持てそうだ。
石の下にいるコガタブチサンショウウオを発見!
沢を横目に奥に進みながら1時間程探してみたものの、なかなか姿を現さないコガタのブチさん。
環境的には入り口周辺が1番良かったので、引き返して重点的に探すことにした。
「ここにもいない…ここにも、いない」
なにが悲しくて深夜の山中で石をひっくり返しているのか。
もつ鍋、地鶏、馬刺し、九州ならではの食べたいものが次々と頭に浮かんでくる。集中力が切れてきたところで、足元の石を退けるとモゾモゾと動き回る生き物が視界に入った。
「本家いた!本家!」明太子のことが頭から飛んで行ったのは言うまでもない。
コガタブチサンショウウオを観察してみる
早速コガタブチサンショウウオを観察してみる。
小さなボディと白斑がきれいなサンショウウオだ。そして、襲ってくる既視感。
そう、マホロバサンショウウオと瓜二つなのである。
コガタブチサンショウウオとマホロバサンショウウオの見分けがつかない
正直な話、コガタブチサンショウウオとマホロバサンショウウオを並べたら見分けられない自信がある。
サイズ感、体色、そして模様、すべてが同じに見える。面白いのは、九州と近畿・中部、これだけ離れているにもかかわらず、まったく同じ外見の別種が存在していること。
本当に生き物って不思議で面白い。常に新しい発見があることが生き物探しの良いところではないだろうか。
コガタブチサンショウウオの生息環境の状況
コガタブチサンショウウオの生息環境は「自然豊かなとても良い環境」とは正直言えなかった。
標高があまり高くなく人里が近いので、ダムの建設(治山)や林道整備などが進み、発見した場所以外の沢では土砂が堆積していることも少なくない。
カスミサンショウウオなどの止水性サンショウウオは人里近い場所に生息しているため、開発などの影響を受けやすいのは有名な話だが、コガタブチサンショウウオにも同じものが迫っている気配を感じる。
特に表を出歩くことがない種類ということもあって、人知れず消えていく未来も決してあり得ない話ではないだろう。
そうなるとやはり「貴重な生き物がいる」と知ってもらうことが重要になってくるのではないだろうか。興味のないものは守ろうとしないのが人の常だから。
九州にはコガタブチサンショウウオ以外にも魅力的なサンショウウオが生息している
ベッコウサンショウオに続き、コガタブチサンショウウオも観察することができた。
新規開拓と新種発見は大変なことも多いけれど、「わからないから面白い」という初心に帰った気持ちで楽しめるので好きだ。
九州にはまだまだ魅力的なサンショウウオが生息しているから楽しみが尽きない。