昔は冬が好きだった。
なぜなら生き物観察のターゲットが哺乳類や鳥類だったからである。
葉が落ちて哺乳類は見つけやすく、冬鳥も渡来するため、冬といえば「生き物観察のハイシーズン」だと思っていた。
しかし今はどうだろう。ターゲットが完全に両生類、その中でも割とニッチな小型サンショウウオという謎ジャンルに移行してしまったため、冬は一部の止水性サンショウウオを除いてオフシーズン。
そのせいで冬の到来が億劫になってきた。億劫というか鬱に近い。そんな悶々とした晩秋に流水性小型サンショウウオを探してみた。
第2のベストシーズン
流水性小型サンショウウオの観察といえばセオリーは春の繁殖期だが、秋もなかなか興味深い季節。
なぜなら、繁殖期の準備なのか、はたまた冬眠の準備なのか、サンショウウオが積極的に移動していると思われる時期だからだ。
春の繁殖期とは全く違う探し方をしなければならないが、そこがまた面白い。
固定観念に縛られることなく、柔軟な視点であらゆる可能性を考慮して探索する。
回数を重ねると、種類によって観察できる時期やポイントに特徴があることがわかってくる。
昨年の秋はコガタブチ系(マホロバ、ツルギ)とヒダ系(ヒガシヒダ、ヒダ)を中心に観察したが、この秋は何と言ってもハコネが中心。
加えて、王道のヒダ系も探してみた。
春の観察の準備期間として
秋のもう1つのメリットとして、木々の葉が落ちて地形が分かりやすくなることが挙げられる。
夏には植物が生い茂って分かりづらかった地形を確かめ、サンショウウオが潜んでいそうなポイントを見つけるチャンス。
繁殖期の観察の幅を広げるという意味で、秋のうちに地形を調査しておくと良いことがあるかも。
やっぱり冬は嫌だ
個人的には春よりも秋の方が当たりを引く確率が高いため、毎週のようにポイントに詰めてしまう。
取れ高は上々である一方で、徐々に気温や水温が下がるのを感じ、冬の到来が怖くて仕方がなくなる。
なぜなら多くの流水性小型サンショウウオの生息地は、冬の訪れとともに雪に埋まってしまうため観察どころかポイントに辿りつくことすら困難になるからだ。
積雪は今シーズンの終焉の知らせ。
ただしそれは流水性に限った話らしい。
逆に止水性小型サンショウウオが繁殖期を迎えるため、多くのウオラーは止水性の観察に移行するらしい。
しかし筆者は止水性サンショウウオを見つけるスキルが全くもって、ない。
正しくは、何度か挑戦したものの見事に敗退し挫折したのだ。
もう一度、止水性に挑戦するかどうか。
自問自答を繰り返しつつ、今年も暖房の効いた部屋でぬくぬくと過ごすことにした。