
最近は流水性サンショウウオばかりで、止水性サンショウウオを観察する機会はめっきり減ってしまっている。
セトウチサンショウウオに関して言えば、5年ほどその姿を見ていない。
付近で工事があったり、イノシシの影響があったりなど不安要素が多いので、生息地が残っているのかすら怪しい。
予想外の環境に驚く

現地に到着して辺りを見渡すと、以外にも変わっておらず懐かしい気持ちになる。
ただ一つ違うのは、植物が繁茂して道がなくなっていること。
どうやら農作業をする人がいなくなって、手付かずの状態らしい。イバラに難儀しながら進むと、予想外の光景が広がっていた。
「一面が湿地になってる」

5年前は幅が50㎝ほどの素掘りの水路だけだったのに、平地が湿地化している。
人の管理がなくなったことで水路が埋まり、行き場を失った水が広がったようだ。
正直に言うと環境が良くなっている。喜ばしいことだけれど、人の影響力を感じずにはいられない光景でもあった。
落ち葉から顔を出すセトウチサンショウウオ

これだけ生息環境が拡大していれば、生き物の数も増えているはず。
イバラの道から少し外れて湿地をのぞいてみると、懐かしい姿がそこにあった。
「セトウチサンショウウオ」
5年たっても変わらない姿に感慨にふけっていると、すぐに引っ込んで逃げてしまった。正直、これだけで満足してしまったけれど、せっかく来たのでもう少し観察してみる。
一面に広がる湿地をゆっくり進んでいくと、サンショウウオがぽつぽつ顔を出している。

ガサガサはせず網も持っていないので素手で捕まえてみる。

ハコネやヒダのような流水性に比べると控えめな体色かもしれないけれど、
背中と腹のコントラストと青みがかった白斑は負けず劣らずきれいだと感じる。
繁殖している証拠「卵嚢」も発見

じっくり観察できたので全体を見て回ると、表に出ている個体だけで10匹近いセトウチサンショウウオがいた。
落ち葉に隠れていることのほうが圧倒的に多いので、個体数は相当多いだろう。おまけに産卵したばかりの卵嚢(らんのう)まであった。
繁殖もうまくいっているようで、なにより。
環境が変われば生息数が増えることを実感

月日が過ぎることで生き物の生息地が消えてしまうことは、残念だけれどよくある。
今回はレアケース。
とはいえ珍しい生き物でも環境さえあれば、こんなにも増えることが知れたのは貴重な経験だ。
次に会うのは1ヶ月か、はたまた数年後かわからないけれど、また同じように落ち葉の下から顔をのぞかせる姿が見れたらと思う。