そのうち見つかるだろうと真剣に探すことがなかった魚「ナンヨウツバメウオ」。
三重や和歌山で漁港・流れ藻採集しても姿を現すことがなく、半ば放置していた目標だ。
適した生息環境に定着するわけではなく漂流するタイプなので、偶然出会うこともあれば、いくら探しても見つからないこともある。
そんな、イレギュラー要素をふくむ珍魚を高知の漁港で真剣に探してみる。
目次
高知の漁港でナンヨウツバメウオを探す
『ナンヨウツバメウオ』はマンジュウダイ科ツバメウオ属の海水魚で、本州であれば太平洋側の漁港で見かけることが多い。
そんなわけで今回は高知の漁港を採集地に設定、というよりも「アカメ釣りの合間の干潮潮止まりに有意義な時間を過ごそう」というのが魂胆である。
ただし、断じて暇つぶしではない。いたって真剣である。
ナンヨウツバメウオ探しは漂流物がポイント
ナンヨウツバメウオは体高が高く、秋の色付きを感じさせる黄色い体色とユラユラゆれるような泳ぎ方が特徴的だ。
その姿はまるで「枯れ葉」のようで、海に漂う枯れ葉に擬態しているとも言われている。
であれば、枯れ葉はもちろん、
- 流木
- 流れ藻
- ゴミだまり
- 船周り
といった漂流物が探すときのキーポイントになる。
マツダイ然り、ハナオコゼ然り、擬態タイプは目が慣れていないと見つからないことも少なくない。
生き物探しは知識もそうだけれど、「生き物を見分けられる目」があるかどうかで結果がまったく違ってくる。初心者と慣れている人では、ここの違いも大きいと思う。
漂っているナンヨウツバメウオを発見!
ヘッドライトで照らしながら漁港を入念に探してみる。
キタマクラやタカノハダイは見かけるものの本命の姿はない。漁港の半分ほどまで探したところで、
「葉っぱの魚いた!」
同行していた友人の声が聞こえた。
急いで駆けつけてみると、たしかにナンヨウツバメウオが泳いでいる!船を停留しているロープに身を寄せているようで、逃げる素振りはない。
恐る恐る後方から網で追い込むと難なく捕まえられた。
感動も束の間、その横にも同じように葉っぱの魚が漂っているではないか。フィーバータイムに感謝して、もう1匹もそっとすくい2枚の葉っぱが並ぶ。
ナンヨウツバメウオを観察してみる
前評判の通り枯れ葉に似ていて、体高が高い。
見た目だけで言えば、熱帯魚のディスカスを彷彿させる。
体色は黄色に茶褐色が混じる。見た目をより枯れ葉に似せるためなのか、尾はきれいな透明。
ちなみに、この姿は幼魚期だけで、成魚になるとヒラヒラとしたヒレはしっかりしたものに変わり、色もグレーになる。
なにより、成魚は50cmを超えるというから驚きだ。捕まえたときにも感じたけれど、遊泳力は高くない。だからこそ、擬態に特化しているのだろう。
「逃げるよりも隠れる」これがナンヨウツバメウオの生存戦略らしい。
ナンヨウツバメウオを見つかれば捕まえるのは簡単?
ナンヨウツバメウオは、見つけることさえできれば採集は難しくないと感じた。
漁港を中心に探して、
- 流木
- 流れ藻
- ゴミだまり
- 船周り
といった魚が擬態・身を寄せやすい場所を探すと確率は高い。
装備は漂流物と魚を見分けられるよう、十分な光量を持ったヘッドライトと魚が抜けない網目サイズのタモ網があれば十分捕まえることができる。
基本的に表層にいることが多いから、水面に届きさえすれば長い柄も必要ないだろう。
見つけるにはちょっと根気がいるけれど、実際に間近で見て捕まえて観察した感動は生き物探しならでは。
ナンヨウツバメウオはそんな醍醐味を十分なほど、感じさせてくれた。