小型サンショウウオの中でも難易度が高めの(と個人的に思っている)ハコネサンショウウオを確実に見つけるためのトレーニング、通称「ハコトレ」を続けてきた今年の夏。
成体に関しては満足な成果を得られないまま夏が終わり、一気に秋になった。
そして思い出す。この時期、初めて出会った小型サンショウウオ (成体)のことを。
小型サンショウウオ(成体)の原点
ハコネサンショウウオ成体といえば、当トトコレ管理人Kazuhoとの出会いを思い出させてくれる存在でもある。
このトトコレを見て不覚にもファンになり、
「一緒にサンショウウオを探しにいきませんか?」
と彼をナンパしたのだ。
なぜなら当時、自力ではヒダサンショウウオの幼生を見つけるのがやっとで、小型サンショウウオの成体を手軽にサクっと見つけたかったからである。よくもまあこんな動機が不純な輩の相手をしてくれたものである。
初回のアタックでいきなりサンショウウオの成体に出会うことができ、それはもう感動した。
それが今回のターゲット・山陰地方産のハコネサンショウウオである。
当時、小型サンショウウオの世界が如何に厳しく難しいものなのか思い知らされたものだ。
しかしいつしかその「厳しさ・難しさ」を「面白さ」に変換してしまった自分がいる。
とんでもない世界に引き込んでくれたKazuhoには感謝と恨みしかない。
と同時に、この世界に引き込んでくれたハコネサンショウウオにまた会いたくて仕方がない。ハコトレも兼ねて、原点回帰企画をやってみた。
故郷にハコネを飾る
原点回帰企画といっても、当時を振り返ってKazuhoと一緒に現場を訪れるだけではない。
まず彼に会う前に自力でハコネサンショウウオのポイントを新規開拓してやろうではないか。
小型サンショウウオを教えてくれた師匠に成長した姿を見せたい、否、この恐ろしい世界に誘い込んだ容疑者をぎゃふんと言わせたい。
実はこの企画の1週間前にハコネサンショウウオを探してあるポイントへ泊まりがけで遠征したものの、派手な丸坊主を食らってしまった。おそらく前回、前々回のサンショウウオ探索が他力本願だったため、バチが当たったと思われる。
今回は原点回帰企画であると同時に、その雪辱戦でもあるため、いつになく燃えていた。
修業の成果
1週間で入念に調べ上げ、絞り込んだポイントへカーシェアを走らせる。
この1週間で季節が急に秋になり、サンショウウオシーズンの到来を予感させつつも、熊にとっては冬眠前の食いだめシーズンである。爆竹や熊鈴で武装しつつ、緊張感と共にポイントに到着。
これまでの修業の成果の1つだろうか、サンショウウオ・レーダーが「何かサンショウウオがいる」ことを教えてくれた。しかしハコネかどうかはわからないし、敢えて期待しない。
こういう時にこそ、奇跡は起こったりする。
なんかいた!サンショウウオいた!
この瞬間が強い中毒性を誇る。
サンショウウオ探索の魅力であり、恐ろしい部分だ。
この時点では何サンショウウオかわからなかったが、そっと土を掘り起こすと、
ハコネサンショウウオ成体!
まだ若い個体だが、間違いない。そして自分がこの地域のハコネとの再会を願う理由をしっかり体現してくれていた。
若い個体特有の黒と橙の派手なカラーリングだ。何度見てもため息が出るほどに美しい。
ハコトレの成果と本格的なハコネシーズンの到来を感じつつ、土産話も出来たところで、Kazuhoとの待ち合わせ場所へ向かった。
原点回帰
憧れていた山陰地方産のハコネサンショウウオを出せた満足感とともに、途中で温泉に立ち寄ることにした。
サンショウウオと温泉のコンボは圧倒的破壊力を誇る。完全に骨抜きになった状態でKazuhoと待ち合わせ。
喜々として新規開拓成功の報告をするつもりが、温泉効果でただの腑抜けと化していた。
そのまま2年前にウェーダーを履いて必死になってKazuhoの後を追いかけた、懐かしいポイントへ。温泉効果で殺気がゼロだったからだろうか、ここから原点回帰企画が爆発する。
目の前に飛び込んできたデジャヴ。
これぞまさに2年前の再現である。
初めて見た小型サンショウウオの成体とそっくりの個体たちが目の前に現れたのだった。
そしてハコネをこじらせた
どうも展開がうまくいきすぎていて、逆に何かフラグが立っている気がしてならず、その場を後にした。
車に戻り、ようやく興奮から冷め、ふつふつと湧き上がる不思議な感情に気付いた。
単なる懐かしさ? 「やったった」という自己満足感?
それともある種の燃え尽き症候群?
・・・その正体は、ハコネサンショウウオの魅力にがっつりと憑りつかれ、ハコネをこじらせるという致死率が非常に高い悪魔的症状であった。
ハコトレは、まだまだ終わりそうにない。