「夏に小型サンショウウオを観察するのは不可能に近い」
小型サンショウウオを探したことがある人なら、一度は聞いたことがあるであろう言葉だ。
・・・本当にそうだろうか?
謎のチャレンジ精神が芽生えたのでやってみたのが今回の企画。
真夏にサンショウウオを探してみた。
目次
真夏のサンショウウオ観察のメリット・デメリット
まずは夏でもサンショウウオ観察は不可能ではない、という前提で(現に幼生なら観察できるのだ)自分なりに真夏のサンショウウオ観察のメリット・デメリットをまとめてみた。
メリット1. 幼生を観察しやすい
春から初夏にかけて誕生し、夏を沢で過ごして秋頃に上陸する種も多いため、自ずと夏は幼生が観察しやすい。幼生のまま越冬する個体や種類もいるが、夏の方が圧倒的に観察しやすい。
メリット2. 沢の冷たい水が心地よい
冬・春なら沢の水に手を突っ込むだけで凍てつく。あの辛さがないのだ。これぞまさに夢心地である。特に幼生の水中撮影には効果を発揮するだろう。
メリット3. 路面凍結の心配がない
サンショウウオは標高が高い地域に生息していることが多いため、生息地周辺の道路は冬は凍結したり、通行止めになってしまう場所も少なくない。夏ならそんな心配がないため活動の幅が広がる。※とは言え、狭い林道や雨天の車の運転は十分注意しましょう。
メリット4. 荷物が少なくて済む
これはサンショウウオ観察に限った話ではないが、防寒着がほとんど必要ないため荷物が少なく気楽である。※とは言え、朝晩の山は冷えるので適宜防寒対策はしておいた方が安心。
メリット5. 日照時間が長い
メリット3でも触れたように、新規開拓にはたっぷりと時間を確保したいもの。夏は日照時間が長いため、た時間を確保しやすい。※夜間の新規開拓は足場がわかりづらく怪我のリスクが高いので避けた方が良いです。
しかしデメリットもある。
デメリット1. 虫の襲撃
夏場の最大のデメリットである。日中でもヘッドライトを点灯して探索しているせいか、そこら中の虫が寄ってくる。
腐海へお帰り!とでも言いたくなる量だ。ちょっとグローブを外した隙に手を、地域によっては露出した耳や頭皮までも容赦なく刺されひどく腫れてしまい病院へ行く羽目に。ヒルの攻撃も注意したい。
デメリット2. 成体の観察は難しい
これまで幾人もの先人たちが研究の末、「サンショウウオを観察するなら冬~春の繁殖期が最適」と謳っているので、やはりそのようなハイシーズンと比べると成体との遭遇率はガクンと落ちてしまう。
デメリット3. 熱中症のリスク
これは実は夏に限った話ではないのだが、サンショウウオ観察は基本的にハードなため大量に汗をかく。夏場は尚更で、標高の高いポイントでも10:00AMごろには汗が噴き出してくるはずだ。水分と塩分の補給を怠らないようにしたい。※冬も熱中症になることがあるので十分注意しましょう。
真夏に成体は出せるのか?
サンショウウオ好きなら誰しもが気になるこの疑問。今回はデメリット2に果敢に挑戦してみた。
「真夏の成体チャレンジ」である。
7月下旬。この夏は異常に梅雨が長く、雨間の数時間で探索に臨むことになった。いつも通りサンショウウオの気持ちになって居心地が良さそうな場所を探索するが全く出ない。もはや人類には不利な場所に身を隠しているということか。諦めかけたそのとき・・・
ハコネサンショウウオ・・・成体?亜成体?
うーん、控えめに言って亜成体か。とは言え、この時期に亜成体に出会えることはなかなかに珍しいはずで、「真夏の成体チャレンジ」に一定の達成感は得ることができた。
真夏の幼生祭
その後も「ハコトレ(ハコネサンショウウオを的確に見つけるためのトレーニング)」を兼ねて何度か成体チャレンジを続けたが、7月下旬に見つけた亜成体を最後に、成体を見つけることはできなかった。
替わりに、美しい幼生たちに出会った。メリット1全開である。探しやすく見た目も綺麗なハコネ幼生は成体とはまた違った癒し効果を放っていた。
※ハコトレについてはこちら↓
また別のポイントでは嬉しいことに、ハコネに加えてヒガシヒダサンショウウオも混成していた。1日でサンショウウオを複数種見つけることができれば、間違いなく優勝である。
おわりに
「小型サンショウウオを探すなら冬~春が良い」という固定観念を捨てて挑戦してみた今回の企画。
最初はブログ用のネタとして始めたものの、夏特有のメリットも手伝って、サンショウウオ探索にさらにはまってしまった自分がいる。今回の記録は7月下旬~8月上旬のもの。次回は8月中旬以降の記録を紹介したい。